香港国際学園〜第二部〜 373
ひかるがそう思っていると公主が思い出した様に皆に言う。
「そう言えば確かもう一人みことの特訓を受けている子が居たわよね…確か…“くりから”さんだっけ」
あの公主が名前を間違えて言ったので皆が唖然とする。
「公主が名前を間違えるなんて…倶利伽羅ではなくて栗原だよ…確かにかなやローマ字は一文字違いだが…よりによってみことの苗字と間違えるなんて…」
理人が以外な表情で言った。
それ程までに公主が間違えるのは珍しく一生に一度有るか無いかの事だった。
だがひかるとえったは別の事で驚いていた。
そう…最近、光樹と影汰…あるいはひかるえったの前に姿を現す謎の青年『倶利伽羅様』と、みこと師匠が同姓…?
いや『倶利伽羅様』の場合…姓なのか下の名前か、あるいは只の通り名なのかすら不明だが…?
何かある…と二人は睨んでいた…。
「…そろそろ…バイトの時間です…。」
ぽつり…と、えったが口にした。
「理事長…立花先生、今泉先生…何かとありがとうございました。」
恭しく一礼するえった…ひかるも同じく、その先を続けた。
「お陰さまで…解決の糸口が掴めました。」
公主は微笑み、小さくうなづく。
「あらまぁ…ここから先は自力で解決する…とおっしゃるのね?
いいでしょう…ここから先は生徒の自主性に任せて見ましょう。」
「桜川光樹、辺里影汰の二名、用件終わり、帰ります…ありがとうございましたっ!!」×2
軍隊の女性士官ばりな退室要領…。
威風堂々と踵を鳴らし、理事長室を後にするひかるえった…。
「ふむ…あの二人だけでは何かと不安が残ろう…私も同行する!失礼!!」
刀機…こちらは挨拶もぞんざいに、いそいそと飛び出して行く…。
「やれやれ…だな。」
「若いって…いいわね。」
苦笑いしつつ…現在いち教師の理人と今泉は顔を見合わせた。
「さてと…。」
氷の微笑を浮かべた…同じく同級生の筈である、現在理事長…公元主姫。
「学園の最高責任者を呼びつけておいて…後は自分らで?どんな教育をなさってるのかしら?」
百戦錬磨の兵、橘理人が…性と暴力の権化、今泉姉妹が…目の前の女帝の微笑みに凍り付いていた…。
「時間はたっぷりあります…貴方がたの教育方針について…じっくり語り会おうではありませんか…(にこにこ)?」
…ちっくしょお…あのガキ共…
…刀機も要領良くなったな…
ひかるえったの後始末…とばかりに、こんこんとお説教される先生方に…合掌…。
…そして、二人は『そこ』へ向かう…。
ひかるえったのバイト先…メイド喫茶『ぬえ』。
「えうぅ…またもや…『ひかるちゃん』としてここに来る事になるとは…。」
店の前で…メロン大の胸を縮こまらせ、相変わらず優柔不断に戸惑うひかる。
「何言ってんですかひかるさん…このままじゃ、それこそ一生『ひかるえった』のまんまですよ?」
えったがノーブラの胸(理都のも未来のもサイズが大き過ぎ)をたぷん、と揺すりながら腕を引く…。