香港国際学園〜第二部〜 355
…影井京平が恐る恐る右手を上げる。
「軍曹ドノ…質問であります…でござる。」
「許可する。」
「ばあちゃる故、死人は出ないでござるが、その…拙者まらそんの装備のまんま…火縄銃と刀…。」
「指定の装備をしなかった蛆虫が悪い。以上だ。」
愕然となる蛆虫一同。
皆、予備弾倉を減らすなりの小細工…別口で量子はツルハシ、羽音なんてハリセンしか持ってない(笑)!
突然、雪菜が口元に手をあて高笑いを上げる。
「ほー…ほっほっほっほっ!無理を承知で機関銃手を引き受けた甲斐があったわっ!戦いは火力…。」
「テメェは最高の蛆虫だ!装備は全て武器弾薬!
水も食糧も回復アイテムもねぇ!せいぜい持久戦に気を付けろ!」
雪菜もまた、他と同じく落胆した。
「ルールは簡単…生き残ったヤツが…『光樹』らの『主役』グループと稽古出来る。」
その一言に…皆の瞳が輝きを帯びた。
奴隷ズは光樹の元へ一歩でも近付く為…他のメンバーもまた、自分なりの信念の為に…。
バーチャル戦管理室で刀機に問う未来…。
「これで良いんですか?刀機さん?」
「馴れ合うだけが友情ではないさ…互いに汚い部分を見せあってこそだ…。」
バーチャル空間の時間で三時間が経過……
空間の中にある広場、そこには半ば瓦礫と化した小さな廃屋があった。
そこにいるのは雪菜と羽音……2人は合流していたのである。
雪菜が機関銃で外に睨みを利かせ、羽音がせっせと瓦礫を積み上げ簡易的なトーチカを作る。
「あのさ、持久戦できないんだけど……」
「ん〜……少しは大丈夫なのね……あたしのリュックの中食べ物しか入ってないから」
割と食い気のある羽音だが、その徹底ぶりに雪菜も開いた口が塞がらない。
「でも何で陣地作んのよ……標的になるだけじゃないの!」
「んとさ……あたし達は誰が考えても結託すると思われてるのねん……だから集合する前に各個撃破される可能性高いのよん……だから、集合場所を作る事が先決……集まるにはわかりやすい場所、見晴らしがいいと襲撃されにくいのね」
ハリセンしか武器(?)無い羽音だが、意外にも知性ある所を見せる。
実の所、羽音の能力モノマネは知能をかなり使わねばならないし、対B組で光樹を奮い立たせた刀機のモノマネとか……とっさに判断できる頭もあるのだ。
ハリセン一つしか無い状態で、羽音は知能を武器に戦うつもりらしい……但し、お気楽キャラの為に凄さが伝わらないのが難点だが……
「サラと量ちん(賀集量子)が集まらないと、ハッキリ言ってジリ貧なのねん……特にジロちゃん(音無次郎)の無音ゲリラに対抗できないのよん……まあ、来るかどうかは賭なんだけどねん」
羽音の言葉、お気楽な調子だから深刻さがイマイチ伝わらない。
「でさ……サラと量子がここに来れるようにする方法とか無いの?」
「ん?、無いこと無いけど……」