香港国際学園〜第二部〜 324
「春斗くん!人質奪還に…。」
…1-Dベンチ…
前線で指揮を執る裕子の姿に、安堵の表情で紅茶…ブランデー入りのアールグレイを口に運ぶ五十土真がいた。
「一時はどうなる事かと思ったよ…皆、我儘に見えて良い子ばかりだ。」
先程の説得が…真の言葉でなければ、ズルい大人の口八丁に過ぎない…しかし常日頃、クラスの一人一人を思い遣り、分け隔てなく愛を注ぐ姿勢を見せる真だからこそ皆それに従うのだ。
1-Cの貞盛雷とは対極…癒し系キャプテン、といった所か?
「おかわり、ブランデー多目。」
「駄目です。」
「けち。」
…スタジアムは正に乱戦…
時折、仲間割れはするが…ペースに乗った1-Dは強い…。
的確にリーダーの流や、攻撃の要であるジョーを押さえ…確実に侵攻を進めていた。
「…クスクス…。」×2
苦痛に酔いしれ壊れた笑いを浮かべる変態カップル…。
正にゾンビ状態…顔は腫れ上がり、手足は不自然に挫けている…しかもダメージが増す程に攻撃力の増す特殊能力『ペインキラー』に加えて…M?
反面…ジョーは巨大パンチ&キックの大振り連続による疲労と…無数の刺し傷に体力を削られ、膝をついていた…。
「ハアッ・・・ハアッ・・・」
もはや息も絶え絶えのジョー。
彼の額には脂汗が浮かび、動きも遅くなっている・・・。
「もういい!後は倉之助に手当してもらうから、下がれ!」
「ハアッ・・・んな訳には、いか・・・ねえんだよ・・・」
心配した陣の言葉も、彼には通じない。
・・・彼は考えていたのだ。
何故、『ペインキラー』がいつまで持続しているのかを・・・
能力だって無限大の物では無い。
いつか、限界が来る筈だ。
彼が注意深くフィールドを見た時・・・!
不死身の正体が何か、何となく分かった気がした・・・。
ダメージを女王様の鞭に見たて…ただ単に…痛みでラリッて強くなる!どMだから(笑)!
「YO!お待たせファック野郎共!へヴィなパンチの後は?
SO!クールなドラッグ!FU!」
駆け付けた倉之助も…ジョーの言わんとしていた事を理解していた。
ぷしゅうううっ!
倉之助の吹いたガスにたじろぐ変態二匹だったが、その一撃はジョーをも巻き込む!
何のつもりか…霧が晴れるとそれは明らかになった…。
「YO!ブラザー!調子はどうだい?」
「HEY!中々クールじゃねぇか?」
ジョーの躯から痛みが引いてゆく…。
傷はそのまま…一時的に痛覚を紛らし、それなりに動ける程度だ…。
反面こっちの二人から…ダメージ判定はそのまま、苦痛のみを取り除けば…。
「酷いよねっ!××ちゃん?」
「苦痛と快楽は表裏一体なのにねっ!〇〇くん?」
互いのお尻を乗馬鞭でひっぱたきながら、痛みを感じない事に憤慨していた。
そしてジョーに、怒りを露に突きかかるが…明らかに動きが鈍っている?
…そしてジョーはもう一つ見抜いていた…この二人は自分程肉体的にタフではないと。
痛みを感じる余裕も無い程の一撃を加えれば…!