香港国際学園〜第二部〜 315
「まさか・・・おい、テメェッ!
八神だけ置き去りにしたのか!」
「するわけがないだろう!
僕は仮にもリーダーだ、仲間を見殺しになんてしない!」
「じゃどこに行ったんだよ!」
理都が流につかみかかる中、流は無意識にもリーダーという言葉を使っていた。
インカムでそれを聞いていた刀機は、男勝り(実際元『男』だが・・・)の太い笑みを浮かべるが、
陣が見当たらない。
どこにも見当たらない。
ふと、見回してみると・・・
硝煙が消え入る隙にD組が本陣に迫っている中、
自陣の前に、満身創痍の姿で彼は立っていた・・・
煙の晴れた向こうに、陣の姿…しかし何故かスブ濡れ…その足元には裂けたキャメルバック(水タンク)…。
理都に絞め上げられた流が説明する。
「間に合わなかったのは認める…爆風はどうにもならなかったが…。」
とっさに担いでいたバックを陣に投げつけたのだ。
そして水圧を操作…水風船の様に破裂させ、水のバリアで陣のダメージを軽減したのだ。
「と言う訳で理都…『おいなり』は勘弁してくれないか…つ…潰れる。」
「おう、悪りぃ悪りぃ!」
流のおいなりさんから手を離す理都。
「最初っからそ〜いえよぉ〜!」
…コイツ本気で潰す気だった…けど…
構わずケタケタと笑いながら剣を拾う理都。
一応、無事な陣も合流したところで流は刀機と連絡を取った。
「体勢を立て直す、タイムだ。」
『うむ、わかった…。』
…1-Aベンチ…
烏丸倉之助が流の指示で『SENZU』と刻まれた丸薬を配っていた。倉之助が能力で精製した回復アイテムだ…。
「理都、倉之助と交代だ。」
流の言葉に怪訝な顔をする理都。
「あに言ってんだよ?ジョーの方が重症だろ?」
流は、こほん…と咳払いすると先を続けた。
「考えたくないが…さっき掴みかかって来た時…普段の握力なら一撃で『潰して』いた筈だ…。」
理都は反論する。
「そりゃ俺が手加減…。」
「嘘つけ、剣を拾う動作も怪しかった…大方、チャンバラの時に腕を痛めたか、いいのもらったんだろ?」
…大した洞察力だな…そのやりとりに刀機がニヤリと笑う。
モニター上、理都のダメージ判定は軽微、理都自身の苦痛も大した事無さそうだが…。
…未来が念の為、ダメージ判定の詳細…数値では大した事ない…をチェックする。
…小手先や脛に軽傷…この辺は烏丸の薬で治る。
「…筋肉断裂の初期症状…。」
ダメージではなく、試合中の怪我としてだ…本来ならマネージャー側で指摘すべき事なのだが、流は戦闘の最中に見抜いていたのだ…。
銀城先生や保健委員の手を借りれば半日もかからず全快出来るだろうが…試合期間中は順番待ちを余儀なくされる。
「俺は…まだ…。」
なおも食ってかかろうとする理都が崩れ落ちた…こんなこともあろうかと流は倉之助に耳打ちし、回復薬と睡眠薬を摩り替えさせておいたのだ。
刀機がインカムで光樹を呼び出す。
「影汰と一緒に…理都を運んでくれ。」