香港国際学園〜第二部〜 162
二人の顔には、笑いという表情は無い。
あえて言うなら、真剣さ。
雪菜はいつもとは違う二人の表情に、何か引っ掛かりを感じた。
「ねえ、未来ちゃん。僕達を苦しめたあいつらは、倒してしまったの?」
光樹には、羽音を庇い気絶した時からの状況が、わからない。
未来は、複雑な表情をしながら、光樹の髪の毛を撫でている。
「ええ・・・、多分倒されたのでしょう。私(わたくし)も最後まで見ていませんでしたから。」
微笑を浮かべる光樹。
だけど、今ここにあらずといった雰囲気の未来。
何か変だ。
上着を脱ぎ、丁寧にたたむ未来。
「…何て言って良いか、わかんないよ…勝った筈なのに…素直に喜べない…。」
光樹は未来から目を背けた。二人は胸中は、復讐の虚しさでいっぱいだった。試合を復讐の材料として持ち出し、皆が一丸となって戦った試合を汚してしまったのではないか。そもそも復讐が成されたのかどうかも…わからない。
「私にもわかりません…戦いを見て思ったんです…あの人達を許す気はありませんが…憎み切る事も…。」
そろそろと身を寄せる未来。
…きゃあぁ?未来ちゃん行け!行ったれ!…