風紀委員Girls! 527
「いいよ、大丈夫だよ。話があるなら中に入ろう」
舞はハンカチを手に取り顔を拭いながら立ち上がり、桃子を促す。
「舞…大丈夫?」
「…私はね」
下手をすればまた泣きそうになる。
舞は桃子に背を向けたままドアを開けた。
「ただいまぁ〜、てか今日お母さんいないんだったよ…」
「買い物?…」
「ううん…美奈子の親と旅行行ってんだよ…」
「じゃあ舞一人なの?…」
「う、うん…」
あんなことがなければ、旬を呼ぼうと思っていた舞だった…
桃子はリビングに向かい、舞はキッチンでジュースを用意する。
「せっかくだから、桃子、泊まって行ってもいいよ」
「いきなり…一人じゃ寂しいんだ?」
「まあね…いろいろあるんだよ…」
あくまで平静を装おうとする舞だが、桃子にはそれが無理をしているのだとはっきりわかった。
「滝谷くんとは、どうなの?」
「あっ…まあ普通だよ…」
ここに桃子がいないでよかった…と舞は思った。
もし面と向かっていたら、自分の顔に出た動揺は、桃子に直ぐに分かってしまった筈だ…
「それならいいけど…さっきの涙…滝谷くんのせいなんでしょ?…」
「い、いや、そんなことは…」
桃子には嘘だと言いたかった。
動揺を桃子に悟られたくなかった。
コップを持つ手が震える。
「ねぇ、無理しなくていいよ、舞…辛かったら何でも話して。私だって舞に助けられたんだもん、舞は突っ走ってばかりじゃなくてさ…」
桃子は舞の背後まで近づき、小さな背中を優しく撫でた。