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日常で
官能リレー小説 - 学園物

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日常で 2


翌日の放課後、太一は同じように花壇の前に行った。
「…いない…」
だがそこにゆみ子の姿は無かった。

翌々日も、その次の日も行ってみたが、ゆみ子は来なかった。
もしかして自分が居るせいで来ないのかと思い、その翌日は物陰に身を隠して小一時間ほどジッと様子をうかがっていたが、結局ゆみ子は姿を現さなかった。

自分が帰った後に来ているのかとも思ったが、それも無いようだ。
その証拠に花壇が荒れてきた。
雑草が伸び始め、肝心の花がしおれてきた…。

「…これはいかん!」

太一はゆみ子に代わって花の面倒を見始めた。
毎日放課後になると花壇に直行し、雑草を抜いて花に水をやった。
自費で肥料を購入し、花に与えた。

ある日の授業中、野犬が校内に侵入して来た。
「うわぁ〜!犬だぁ〜!」
「犬だぁ!」
「犬ぅ〜!!」
「コラ!!お前ら授業に集中しろ〜!」
何がそんなに面白いのか、皆ハイテンションになる。
「花が危ねぇ!!」
太一は立ち上がってそう叫ぶと走り出した。
「コラ!!袖ヶ浦!どこ行くんだ!?授業中だぞぉ〜!?」
「そんなもん後回しだぁ〜!!」

…結局花壇は無事だったが、その後先生にこっぴどく怒られた。
「そんなに花が大事なら柵でも作って囲っとけ!!」
「その手があったか!!」
太一はそう叫ぶと走り出した。
「コラ!!袖ヶ浦!どこ行くんだ!?説教中だぞぉ〜!?」
「そんなもん後回しだぁ〜!!」

太一は廃材を使って花壇の周囲に木製の柵を作った。
完成した柵は見栄えがしなかったので白ペンキで塗装して立てた。

「…完璧だ!」
太一は以前とは見違えた花壇を見て感無量だった。
早いもので彼が花の世話を始めてから1ヶ月が経過していた。
「でも何か忘れてる気がするなぁ…何だったっけ?」
「あのぉ…」
「へ…?」
後ろから話しかけられて振り向くと、そこにゆみ子が立って居た。
「か…仮居!?」
「ひぃ!?…す…すいません…あの…私…そ…袖ヶ浦君に…その…謝りたくて…」
「…謝る?仮居、俺に何かしたか?」
「あ…こ…こっち見ないでください…あの…見られてると…き…緊張して…話せないから…」
「わ…わかったよ…」
太一は後ろを向いた。
「これで良いか?」
「あ…はい…そ…それで大丈夫です…」
少し落ち着いたのか、ゆみ子は言った。
「そ…袖ヶ浦君…その…すいませんでした…お花のお世話…あなたに押し付ける形になっちゃって…」
「いや、良いんだよ。俺が好きでやってたんだし…てゆうか仮居が花の世話しに来なくなっちゃったのって、やっぱ俺のせいなんだろ…?」
「はい」
(そ…即答!?)
ある程度予想はしていたがショックだった。
「…袖ヶ浦君に声かけられた時…私、びっくりしちゃって…あの…袖ヶ浦君だけに言いますけど…実は私…その…いわゆる対人恐怖症なんです…」
「あ、うん…たぶんそれみんな知ってると思う」
「…それで…またここに来たら袖ヶ浦君に話しかけられるんじゃないかって思ったら…なんだか怖くて…すいません…上手く言えないんですけど…本当にすいません…」
「あ、大丈夫。充分伝わってるから…」
太一は色んな意味で泣きたい気分だった。
だが、次にゆみ子の口から出て来たのは意外な言葉だった。
「で…でも…この1ヶ月…私に代わってお花のお世話をしてくれていた袖ヶ浦君を見ていて…あなたは良い人だって事が分かりました…だから…その…勇気を出してお詫びの気持ちを伝えようと思ったんです…」
「そうだったのか…」
「はい…袖ヶ浦君…本当にごめんなさい」
そう言うとゆみ子は太一に深々と頭を下げた。
「…良いよ。あとさ、こういう時は“ごめんなさい”じゃなくて“ありがとう”って言った方が良いと思うよ…」
「いえ、そこは私的には“ありがとう”より“ごめんなさい”ですから」
「そ…そうなんだ…(たまに澱み無く喋るんだなぁ…)」
「あ…それで…その…私、袖ヶ浦君に…その…お詫びがしたいので…あの…私の家に来て欲しいんですけど…」
「えぇ…っ!?」
突然のお誘いに太一は耳を疑った。
(マジかよ!?いきなり家って…うわぁ〜!別に下心あった訳じゃないけど、花の面倒見てて良かったぁ〜!)
太一は心の中でガッツポーズを決めた。

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