風紀委員会 2
「そうよ!ウチらを疑う気?」
「でもあなたたちねえ…」
「そんなこと言うならあたし帰る。行こうよトモミ」
「うん、やってらんねー」
「あー待って待って!先生たちが悪かったから!一緒に風紀委員会やろうよ!」
佐々木が慌てて引き止める。
「そう言うんならやってあげてもいいよ?とりあえずウチらの教室で話しようか?放課後だからだれもいないし。邪魔者もいないし。」
篠田を一瞥するミナミ。
「良かったー、そうだね。そこで今後の詳しい話をしよう。」
佐々木は白衣を着て職員室を出ようとする。
「ちょっ…佐々木先生…」
「篠田先生?」
「はい?」
佐々木が振り返る。
「あまり余計なことをしないで下さい。」
(ゾクッ…。)
そう言うと佐々木は2人と一緒に早々に去っていった。
(何…今の感じ。)
篠田は一瞬強い悪寒を感じた。
だが篠田は気づく余地も無かった。
本当に危険なのはトモミとミナミではなく、佐々木であるということを…。
「ここが2年C組。入って。」
ミナミは扉を開けた。誰もいない。
「じゃ失礼するよ。」
佐々木は教室に入って中を見回した。
落書きだらけの黒板。
乱雑に置かれた机と椅子。
床にはポテトチップスの袋が散乱し…もはやとんでもない有り様である。
「じゃあ具体的な活動内容の話をしようか。まずはそこに座って。」
「先生、その前にね?紹介したい人たちがいるの…。」
「みんなー!今だよー!」
ベランダから10人ほど生徒たちが出てくる。
トモミは慌てて教室の鍵を閉めた。
「この人たちは?」
「…ンフフフ…アハハハハ!」
ミナミが笑い出すと他の生徒も笑い出した。
「アハハ…あんたねえ、風紀委員会なんてやるわけないでしょ?」
「今時頭のカタイ野郎もいるもんだね?ミナミとあたしでこの作戦考えたの。」
「先生にこの学校のルール、教えてあげないとと思ってね」
2人をはじめ、他の生徒もジリジリと佐々木と距離を詰め始める。
佐々木は黒板を背にして囲まれてしまった。
「まさかリンチされるとは思って無かったでしょ?」
トモミが性悪そうに笑う。
「これからたっぷりいたぶってあげるから…みんな、やっちゃおうよ!」
ミナミの声でバットが握った生徒が数人佐々木に飛びかかる。
細身の佐々木が抵抗できるはずはない、誰もがそう思っていた。
しかし。
佐々木は素早く白衣のポケットから赤い缶の小さいスプレーを取り出し、バットで襲いかかって来た生徒の目に赤い飛沫を噴射したのだ。