ギリギリすく〜と 2
そして、親父の再婚相手と対面する今日。
この日が来るまで、長かった。いつも時間と違って、本当に長く感じた。
おかげで、学業も家事も手に付かなかったし、なかなか寝付けなかった。
逆に今日は時間の流れが早く感じた。あれよあれよと言う間に会う数分前になっていた。
待ち合わせ場所となっている喫茶『翡翠』で、先に来ていた高坂親子は妙にそわそわしていた。
「猛、もう少し落ち着いたらどうだ?」
貧乏揺すりする猛に話し掛ける。
「親父もな。コーヒーに砂糖入れ過ぎだぞ」
客観的に見ればどっちもどっちだ。
しばらく待つ事数分、いよいよ勝の再婚相手と対面する時間になった。
「どうやら、相手が来たようだ。今呼んで来るから少し待っててくれ」
「ああ」
勝は一旦外へ出た。
勝がすぐに店内に戻ると、勝の後ろから清楚で綺麗な女性が現れた。
「まさか、あの女性が親父の再婚相手か?」
更にその女性の後ろから、猛と同い年位の綺麗で尚且つ可愛らしい少女が一緒に付いて来た。
が、その少女に猛は大いに驚いた。
何故なら、彼女は猛と同じクラスだったのだから。
猛が注目した女子の名前は、『川崎舞』と言って、猛と同じクラスメイトである。
彼女の評価は、学校の内外問わず人気者で容姿端麗、文武両道、そこいらのグラドルもびっくりのプロポーションを持ち更に気立てもいいと、天に二物どころか、三物も四物も与えている我が校を代表するマドンナ的存在だ。
猛も人並みに彼女を気にはしていたが、家庭事情もあり、とんだ夢物語でしかないと猛は思っていたが……
いやいや、惚けるのまだ早い。
たまたま、彼女が喫茶店に寄っただけかもしれないではないか。
そんな風に思っていると、勝とその後ろにいる女性、更に川崎舞が、猛のいる席へやってきた。
「うわ、案の定じゃねぇか……」
猛は思った事をつい口に出して言った。
「何を言っているんだお前は?あ、どうぞ。座ってください」
「はい、失礼します」
どうやら川崎舞の姉?もしくは母親?と思わしき女性は恭しく頭を下げて席に着いた。
それに続いて、川崎舞も席に着いた。
どうやら、川崎の方も俺を見て平静を装ってはいるが、驚きを隠しきれてないみたいだな。
あの驚き方は、俺と同じ様に当日まで殆ど知らされてなかったっぽいな……
「では、改めてお互いの自己紹介を、まずは私から自己紹介します。私の名は高坂勝。取り敢えずはしがない会社員(重役)をしています。隣に居るのは私の息子になります。以後宜しくお願いします」
勝は無難に挨拶を済ませると、すぐに勝は肘で猛を小突く。
どうやら、お前も自己紹介しろという事だろう。
その意図を汲み取った猛は、自分も自己紹介に転じた。