PiPi's World 投稿小説

我が主よ!
官能リレー小説 - ラブコメ

の最初へ
 -1
 1
の最後へ

我が主よ! 1

「おはようございます、我が主(あるじ)よ」
「え…誰っ!?」
ある朝、全寮制私立校・大倭(やまと)学園高等部に通う飛龍 章(ひりゅう あきら)が学生寮の自室で目覚めると、布団の傍らで一人の美少女が三つ指付いて頭を下げていた。
少女は章と同じ二年生の学年章を胸に付けた大倭学園の制服に身を包み、長く美しい黒髪を後ろで縛ってポニーテールにしている。
キリリとした印象を与える整った眉、二重で意志の強そうな切れ長の瞳、鼻筋の通った顔立ち、卵形の輪郭、艶やかな漆黒の髪と好対照な白い肌…正に絵に描いたような和風美少女だが、大和撫子という感じではない。
言うなれば“侍(さむらい)”だ。
…というか少女の右側には何故か一振りの日本刀が置かれている。
こんな美少女がウチの学校に居ただろうか?と思わず頭を捻ってしまうぐらいの美少女であった。
「申し遅れました。拙者、御楯 剣(みたて つるぎ)と申す。我が主家たる飛龍家が嫡男・章様にお仕えするため参上つかまつりましてございまする」
「御楯?御楯って確か昔、家の先祖に仕えてた人の名前だよね…」
章は少女の姓に聞き覚えがあった。
彼の実家、飛龍家は今でこそ落ちぶれて庶民的な暮らしをしているが、かつては地元一帯を治めていた領主だった。
御楯家はその頃の一の家臣である。
「あ…あの、それで御楯さん…」
「なりませぬ!」
章が呼びかけると少女…剣は拒絶の反応をした。
「はあ…?」
「あなた様は我が主君、そして拙者はその家臣…主君たる者が家臣に対して“さん”付けなどされては、他の家臣達に対して示しが付きませぬ!」
「いや、他の家臣なんていないから。じゃあ…つ…剣…」
「は!我が主よ!」
「色々訊きたい事はあるんだけどさ…まず、どうやって俺の部屋に入って来た?ドアにも窓にも鍵が掛かってたはずなんだけど…」
「それは素直に学園の理事長殿に『我が主の部屋に入りたい』と頼んだら合い鍵をいただけたのでございます」
「そんな理由で通ったのかよ!?」
「何をおっしゃいます?理事長殿の大倭家も飛龍家に仕える家臣なのですよ」
「え…ええーーーっ!!」
章の反応に剣は怪訝な顔をする。
「ご存じなかったのですか?」
「あ…それはね……」
領主から落ちぶれた飛龍家だったが、領主時代の資料は残っていた。しかし、30年前に火災で大半が消失してしまい、章はもちろん彼の両親でさえ、どんな家が飛龍家に仕えていたのかを把握できていない。
章が御楯家のことを知っていたのも、かろうじて焼け残った資料に記載されていたからだ。

「そうだったのですか…」
「それで、俺に仕えるとか言ってたけど……」
章の疑問に答えようと剣が口を開きかけた時、
「失礼するで」
ドアの向こうから声がした。
とっさのことで二人とも反応できずにいると、返事を待たずにドアが開く。
「まずは…おはようございます、やね」
章の部屋に一人の美少女が入ってきた。
少女は章と少し異なる中等部三年生の学年章を胸に付けた大倭学園の制服に身を包み、長く美しい黒髪を縛らず真っ直ぐにしている。
ホンワカとした印象を与える眉、穏和そうな丸っこい瞳、鼻筋の通った顔立ち、卵形の輪郭、艶やかな漆黒の髪と好対照な白い肌…剣に負けない和風美少女だが、大和撫子でもなければ侍という感じでもない。言うなれば、慌ただしい俗世を超越した“巫女(みこ)”だ。
「申し遅れました。うち、じゃなくて、わたくしは大倭 文(やまと ふみ)にございます。我が主家たる飛龍家が嫡男・章様にお仕えするため参上つかまつりましてございまする」

SNSでこの小説を紹介

ラブコメの他のリレー小説

こちらから小説を探す