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我が主よ!
官能リレー小説 - ラブコメ

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我が主よ! 2

(今度は巫女さんか・・・)
次々と起こる事態に思考が追いつかないのか、章は半ば放心している。
「文!どういうことだ!ご主君のお世話係には拙者が任じられたはず!関係ない人間はとっとと失せろ!さむなくば我が愛刀・桜花の錆にしてくれる!」
「うふふ・・・残念ですが、わたくしも章様にお仕えするよう命じられ来ましたのよ・・・剣さんの方こそお帰りくださいませ」
どうやら二人は顔見知りのようだ。
もっとも、残念ながらそれほど交遊的な関係ではないらしい。
剣は傍らの刀を手に取りながら立ち上がり、何時でも刀を鞘から抜ける体勢をとる。
対して文はやや左半身になり、軽く開いた両手を顔の前に構える。
互いの視線が絡み合い両者の間で見えない火花が飛び散る。
「ごく・・・」
突如として始まった真剣勝負の空気に、章は息苦しさを覚え生唾を呑み込む。
(な、なんなんだ・・・)
章としては刃傷沙汰に人を巻き込まないでくれ、と言いたい気分なのだが、場の雰囲気に当てられ声も出ない。
素人には一見二人が睨み合っているだけに見えるが、今この場では熾烈な神経戦が繰り広げられている。
その拮抗が崩れてしまえばその瞬間今度は、真剣を用いた激しい戦いが繰り広げられるのは間違いない。
『痴情の縺れか!?一人の少年を巡って二人の美少女が真剣で殺し合い』
万が一にもそんなニュースをテレビで流されたら、例え未成年という事で実名が報道されなくても、このプライバシー無き情報社会。
彼の人生は大きく歪められる事になるだろう。
(な、何とか二人を止めなくては・・・)
己の将来の為にも何とか場を納める方法を考える章だったが、二人が放つ殺気に押され、金縛りになったように動けない。
「ね、ねえ二人とも、ちょっと落ち着い・・・」
五分か十分か・・・章の主観では一時間にも思えるような長い時間が経ち。多少は場の空気に慣れた章が二人を止めようとする。
だが、それは二人の間の微妙な拮抗を崩す事になった。
「「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」
烈火の気迫と共に二人は一気に間合いを縮める。
(ああ!もうダメだ!!)
次に来るであろう惨劇に怯え、章は固く目を閉じる。
しかし、その瞬間、二人を隔てるように漆黒の刃が飛び込んできた。
「そこまで!・・・若の御前で何をやっているの二人とも?若のご命令が聞こえなかったの?」
そんなクールな中にどこか怒りを滲ませたような声と共に、忍び装束に身を包んだ美少女が天井裏から降りて来た。
「サムライ。巫女さん。と来て今度はくの一か・・・」
余りに非現実的な事態の連続に驚くことも面倒になったのか、章は呆れたような声で突っ込みを入れる。
「お初にお目にかかります若。私は飛龍忍軍がくの一。三日月 忍(みかづき しのぶ)と申します。頭領の命令を受け飛龍家の次期当主である章殿にお使えするため参上仕りました。この三日月 忍!不肖の身ではありますが、飛龍家再興のため影ながら粉骨砕身させていただきますので、他の二人共々何とぞよろしくお願いいたします」
そう言うとくの一の少女は深々と頭を下げる。
「う、うん・・・」
(何なんだろうこの状況・・・誰か説明してくれないかな・・・)
だが、気弱な少年は内心のその呟きを実際に口に出して言う勇気は無い。
こうしてこの日割と何所にでも居る平凡な高校生だった飛龍 章の平穏な日々は終わり、三人の美少女たちとの波乱に満ちた生活が始まったのだった。

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