人生をやり直すために必要なもの 4
「澪さん…大丈夫?」
「う、うん…ただね、美晴ちゃんを見ていると、私なんて大したことないのかなって…思えてくるのよね…」
「そ、それを言うなら…僕なんて…」
美晴ちゃんどころか、澪さんの体験してきたことの足元にも及ばない…
「遼平くんも私も…きっと弱いんだよね…もっと強くならなくちゃいけないのかな?」
『男なんだから、もっと強くなれ!』
父さんの怒鳴り声が甦る…
窓の外の海が潤んだ…
…??
突然、両手に温もりを感じた。
「遼平くん…辛かったんだよね?」
澪さんの手だった。
「う、うん…」
「私たち、一人じゃ弱いかもしれないけど、お互いに頑張れば、きっといつか、壁を乗り越えることができると思うんだ…」
澪さんの声が、震えていた。
「澪さん…」
「遼平くん…」
その瞳に、涙が溜まっていた。
「一緒に、頑張ろう」
「うん…!」
手を握り返した。
その手は、とても温かかった。
―少しして…
「御坂くん、古沢さん、ちょっと良いかな?」
美晴ちゃんと話していたカウンセラー・菅原杏里さんだ。
「もちろんで〜す!杏里さん何でしょう?」
カウンセラーの中でも歳の若い杏里さんは、先生というよりお姉さんのような存在だ。
僕も杏里さんにだったら、何でも話せそうな気がしていた。
「ごめんね、せっかくのお寛ぎのところぉ」
「何言ってんですかぁ。杏里さんの頼みなら何をおいてでも駆けつけますってぇ〜。」
「もぉ〜嬉しいこと言ってくれるなぁ〜。古沢さんが男だったら、直ぐにでもカノジョに立候補しちゃうんだけどなぁ。」
「私は女だって構いませんけど?」
「クスッ、それじゃ私が立候補しちゃおうかな?」
美晴ちゃんがニコッと笑った。
「ちょっと、美晴ちゃんったら〜」
澪さんと杏里さんが2人して照れている。
ここに来てから、割とよくある光景だ。
それぞれの心の傷はあっても、こうしてみんな笑顔でいられるのはすごくいいこと。
僕も自然とにやけてしまう。
「ところで、杏里さん、話って何でした?」
思い出して聞いてみる。