人生をやり直すために必要なもの 13
「ああ、そうだね」
澪さんがくれたお菓子を食べながら、そう返す。
…ここに来たことで、ようやく人並みの日常が送れることになったのだろうか?
それはそれで複雑なことだ。
まあ、澪さん美晴ちゃんと出会えたのはとてもいいことだ。
2人ともとてもいい子だから。
ガタガタ…
…外は少し風が強くなってきたみたいだ。
「風、強くなったね」
「台風のせいかな」
進路は陸地から離れていくのに、ここが海に近いせいだろうか。
「海で遊べるといいね」
「そうだね」
美晴ちゃんが先に眠りについて、澪さんと僕で2人きりになった。
初めてのことで、少し緊張する。
「私、ここに来てよかったと思う」
澪さんが唐突に言う。
「今までの、管理された私はもう嫌だったんだ…でも、一人になるのが辛くて、とても不安で、ずっと迷ってた…」
その声がだんだん震えていく。
「でも、嬉しかった。遼平くんに、美晴ちゃんに出会えて、よかった…」
震える声、肩、身体。
「澪さん…」
思わず僕は、澪さんの身体を抱きしめた。
細くて、柔らかくて、それでいて、温かかった…
「遼平くん…」
「僕も、澪さんに出合えてよかったと思ってる…」
「遼平くん…」
澪さんの瞳が潤んだ。
「好き」
澪さんが耳元でそう囁いたのが聞こえた。
「澪さん…」
予期せぬ一言。
でも、それは、今の僕にはたまらなく嬉しい言葉だった…
「遼平くんのこと、好き。今まで出会った人の誰よりも、この世で一番…」
瞳を潤ませながら、笑顔で澪さんは言う。
澪さんの体をギュッと抱きしめると、唇に柔らかい感触がした…