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駆ける馬
官能リレー小説 - スポーツ

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駆ける馬 405

やはりこのあたりは抜け目がない。
岸田もそれに続こうと追い出しを始めるが、下がってきた先行馬を捌くのにほんの僅かだけだが時間を要してしまう。
その間にスカーレットブーケは2馬身、3馬身とリードを広げていた。

追いかけるがなかなか差はつまらない。

そこからどう追っても差は縮まらず・・・
サムシングブルーはスカーレットブーケから遅れること3馬身差でゴール。
完全な力負けであった。

ともあれ、芝のレース・・・
それも重賞で好走できた事は好材料だった。
岸田の騎乗も決して悪いと言えなかったし、むしろよくやったと言っていい。
これならクラシック戦線でやっていける目処がついたとも言える。
寛子はサムシングブルーがタフに使える馬と見ているので、もう一戦ステップレースを経て桜花賞に向かう事を決めたのだった。


3月に入り、ようやくツインターボのデビューの日が来た。
牧場での育成でも散々苦労させたツインターボであったが、笹村厩舎でもそれは変わらなかった。
普段は人懐っこい癖に、人が乗ると途端に臍を曲げる。
調教しようとしてもうんともすんとも動かなかったり、いざ走り出すと止まらない・・・
ゲート試験通過にも四か月を要してしまったのだ。
これでもラルフやジョンに言わせれば随分成長したと言うのだから、本当に困ったものだった。

3月の中山、ダート1800mの新馬戦。
本来は芝を使いたかったところだったが除外されダート戦に回る。
笹村師によれば適性は問題ないとのこと。

鞍上の石原はこれといった実績のない地味な騎手…だが、気性に難のある馬にトップクラスの騎手を据えるのは何か起こってからでは遅い。

レース前のパドックで笹村は石原に軽く指示を出す。
「馬の好きなように走らせるんだ。ハナに立って、あとは舵を取るだけでいい」

つまり馬に任せて余計な事はするなと言う事だ。
まあ、こんな指示を出すと言う状況だからこそ良い騎手に任せれない訳だ。
むしろ、一線級の馬に縁のない石原に経験を積ませてやるぐらいの感覚で笹村は送り出した訳だ。


そしてゲートが開き各馬ほぼ揃ったスタート。
その中でツインターボのスタートは、出遅れこそ無いものの良くは無かった。

それでも石原はホッとする。
人が乗ると意固地になるツインターボは、調教でも気を損ねると30分以上動かなくなる事すらある。
その上にゲート嫌いで、試験突破に相当苦労させた。
どうも環境が変わると駄目なタイプらしく、笹村厩舎に来た途端に牧場で出来ていた事も出来なくなったのだ。
それだけに最も環境が変わりストレスのかかるレースで、スタート出来ただけでも褒めていいレベルだったのだ。

だが、石原の苦労はここからだった。
スタート時に後ろの方だったツインターボが凄まじい勢いで加速し始める。
小さな馬体が弾丸のように馬群を突き抜けていくのだ。

この加速力はすさまじい。
確かに持ってるモノはすごいが、制御できなければそれも意味がない。
石原は何とか馬をなだめながら最初の直線で先頭のポジションをとることに成功した。
まだ外枠だったから比較的楽だったかもしれない。

後ろとは4,5馬身の差がついて向こう正面に入る。
うまくコントロールできているようで、実際にはとんでもない苦労を費やしている石原…それでもコントロールできているか本人は怪しいところだった。

ツインターボ自身は非常に気分よく走っているように見えた。

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