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Rebuild〜女ふたりで世界を変えよ〜
官能リレー小説 - スポーツ

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Rebuild〜女ふたりで世界を変えよ〜 6

やがて新しい年になり、FAの目玉選手の契約が徐々に決まっていき各球団選手ともにスプリングトレーニングへの準備に差し掛かった、1月末のこと。

シーウルヴスの球団事務所のオフィスで、エマは来客を迎える準備をしていた。

「君がエマかい」
「はい。今日はわざわざここまで、ありがとうございます」
「いや、ウルヴスが大きく変わったと聞いて、僕もとても興味があったからね」

オフィスにやってきた男―ロイ・デービス。
39歳になるベテラン捕手で、今シーズンの契約先は決まっていない。
彼は、6年前まではこのシーウルヴスの一員だったのだ。

堅実な守備と味方投手を盛り立てる明るい性格でチームを引っ張ってきたリーダー格。
ゴールドグラブ賞も3度受賞した。
打撃は今一つの印象だが、意外性の一発の魅力を秘めている。

エマに案内され、デービスがオフィスの奥の部屋に入る。
そこにはキャロラインがいる。

「お久しぶりです」
「オーナーのお孫さんも立派になったもんだね」
「いえいえ」
キャロラインは重要な話を切り出す前に、デービスに告げた。

「祖父と父があなたに対してひどい仕打ちを与えたこと、お詫びします」
「ああ、いや、もう昔のことさ、君が気にすることでもないし」

デービスはキャロラインの謝罪に笑って答えた。

6年前の出来事。
6月上旬のこと、シーウルヴズは好調でプレーオフ進出圏内を目指していたさなかの、ある試合。
当時20歳のメンドーサが先発し6回までノーヒットピッチングという好投を見せていた。
1点リードの7回も2アウトまで順調に抑え、その次の打者も空振り三振にとって抑えた―かに見えた。
低めの変化球がワンバウンドし、デービスが後逸したのだ。
打者は一塁に向かって全力疾走し、振り逃げが成立。
さらにその次の打者の初球で、またしてもデービスが低めの変化球を後逸。
ランナーが二塁に達する。

続く2球目はフォーシームが甘く入ってしまい、フルスイングされた打球はレフトスタンドに飛び込んでいった。
この試合を落としたシーウルヴズはここから9連敗を喫し最下位に転落。
9連敗となった試合の終了後、キャロラインの祖父と父が話し合い、デービスの解雇を決めたのだった。


デービスはシーウルヴズを解雇された3日後に同地区のライバルであるテキサス・ウォリアーズにクレーム(獲得の申し込み)され、即正捕手として起用された。
ウォリアーズはデービスの活躍もありその年の地区優勝を果たし、デービスはその後移籍したチームでも正捕手として好成績を収めてきた。
一方、デービスの解雇以後、シーウルヴズは捕手を固定できずそれがチームの暗黒期を形成する一因となってしまうのである。

「私としては、あなたを来季の戦力として考えています」
「それは嬉しいね…ただ僕ももうすぐ40歳になる。今シーズンが終わったら現役引退しようと思っていたんだ」
「あなたの現役ラストイヤーをウルヴズで迎えられたら、とも考えていました」
「それは嬉しく思うね」


エマとキャロラインはデービス本人と話し合いをする前に、すでにシーウルヴズと契約延長を決めていたメンドーサに彼と契約する計画を打ち明けていた。

「ロイと契約する?もちろん賛成だよ!彼ともう一度同じチームでプレーしたいと思った。彼の年齢を考えたらもうチャンスも少ないだろうしね」
「6年前のあの試合…昨日のことのように覚えてるさ。あの時の俺はまだ若かった…ロイのミスで無駄に苛立って、不用意に甘いファストボールを投げて打たれた…責任は俺にあったのに、ロイがすべてを背負わされてしまった。申し訳なく思ったよ」

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