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アイドルジョッキーの歩む道は
官能リレー小説 - スポーツ

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アイドルジョッキーの歩む道は 13

ゲート奥での輪乗り。
ジェイエクスプレスも他馬に混じって周回する。
しかし、ヴィングトールはその中に入らず奥の方でじっとしていた。
鞍上の師岡はそのタテガミを優しく撫でる。
それだけで馬には大物感があるし、若き天才ジョッキーの余裕を感じさせる。

いよいよスタートの時を迎える。
ファンファーレが鳴り、スタンドから拍手が起こる。
ジェイエクスプレスは落ち着いており、すんなり真ん中7番枠に収まる。

ほぼ綺麗なトラックコースに近い東京競馬場は、1800mだと2コーナー奥のポケットからスタートになる。
そこから緩やかに2コーナーを曲がってバックストレートに至る所が先頭集団の勝負所である。
ストレートは日本で2番目に長く坂のあるタフなコース。
形こそ所属競馬場のトラックコースに似てるが全くの別物であった。

碧はゲートの中でスタートを待つ。
所属競馬場なら、こんな位置から歓声も届くか届かないだが、流石は巨大競馬場・・・
地鳴りのような歓声がここまで響く。
これがG1ならどうなるのだろう。
そう思えるぐらい凄まじいものだった。

幸い、ジェイエクスプレスは大人しい。
こんな場面でも動じてないのはいい事だ。
普段は厩務員達からもっさり君なんて呼ばれたりもするが、この落ち着きはこの場面では有り難かった。

スターター台が上がり、いよいよと碧も集中する。
そして、号令と共にゲートが開いたのだ。

ジェイエクスプレスは悪くないスタート。

ヴィングトールこの前のレースはヨシダッシュに釣られたが、今回は落ち着いて走っている。
いい感じだ。

先行争いは中央馬。
快速血統の申し子、ローゼンブランシェがハナを切る。
唯一の牝馬だが、この年齢だと牡牝の差はそこまでない。
それに2頭程が競りかけていくが、碧の体感ペースより速い。
恐らく戦前教えて貰った情報だと、これが中央のターフでは普通に近いペース。
言うなれば地方とは違う中央のレースだった。

所属競馬場では1800mとなると長い距離感覚だが、ペースが速いからあっと言う間にバックストレートに入った。
ジェイエクスプレスの位置は中団やや後ろ。
ヴィングトールは1馬身前にいる。
ちらりと後ろを見ると、ダイリキセブンは最後尾。
剛腕兼山も自分のレースをするらしい。

ヴィングトールと諸澄は持ったままの楽走。
ゆったりとしたストライドに碧も惚れ惚れする程だ。
だが、ジェイエクスプレスも同じく落ち着いて走れている。 
初めての芝に楽しんでるようで安心できる展開だった。

バックストレートで位置取りの落ち着いた馬群は3コーナーに向かう。
3コーナーと4コーナーは1、2コーナーより大きく緩やかで、更にスパイラルコーナーの為にスピードが出やすい。
所属競馬場も地方にしては大きなコーナーだが、平坦コーナー故に外に振られてしまうが、ここはそうでない。
この3コーナーの向こうには勝負所の大欅のある4コーナー。
そして長くタフな直線が待っている。
ヴィングトールには動きはなく、中団は落ち着いている。 
先団はややペースが上がったのか、中団と差が開いていた。

これはヴィングトールを意識しての展開だろうか。
先行集団はヴィングトールの脚を封じて勝つ作戦だろうが、碧の見る限り馬も鞍上も余裕がありすぎる。
勿論、碧とジェイエクスプレスにも余裕があり、速い展開は大歓迎だ。

そして馬群は勝負所の4コーナーに向かう。
後方集団がややペースを上げてきたが、諸澄に動く気配は無い。
そして碧もまだ動かない。

先頭集団は3頭。
逃げるローゼンブランシェに2頭の牡馬が馬なりで並びかけてきた。

先に仕掛けたティーエムレオーネに外からグランドバスターが被せに行く。
ローゼンブランシェの鞍上の手綱が少し慌ただしくなる。
並んだ2頭は十分余裕がありそうだ。

ティーエムレオーネの鞍上は「魔術師」と呼ばれるベテラン・館山和典。
グランドバスターの方はイタリアの名手、ルーカス・ロッシ。2年前から日本での通年騎手免許を取得している。
ともに人気薄だが、駆け引きの上手い騎手がまず動き出したのだ。

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