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淫蕩王伝―再誕―
官能リレー小説 - ハーレム

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淫蕩王伝―再誕― 125

「帰れるのかな……みんな……」
 しみじみとした、寂寥。
「どうして僕は……この世界に来たんだろう」
 それは、彼が折に触れて思う疑問だった。
 自宅で眠っていた時に謎の綺麗な女性が跨り……童貞喪失して、そのまま気づけばアルマール寺院にいた。セーラや寺院の人達によると光と共に現れたという。
 アルマール寺院で目覚める前の、夢の中で誰かに言われた言葉が妙にはっきりと豊の記憶に残っている。
『……あなたは、私の元でこの世界を救うのです。そのために多くの手助けがあるでしょう。多くの出会いがあるでしょう。そのためにあなたは私の力の一端を授かっています……愛してくれる者たちと共に、力を尽くしなさい……』
「世界を救え……か……すごいけど、漠然とし過ぎてるしどうすればいいんだろう……?」
 ぼんやりと考えているうちに、彼は眠りに落ちていた。




 豊は一心に竹刀を振っていた。
 竹刀が風をきる、ひゅん、ひゅんと。
 豊の左右では、妹の初音と彩音が同じように竹刀を振っていた。
 少しおてんばな、無心に竹刀を振る、上の妹の初音。
 大人しいけど負けず嫌いな、母譲りの可愛い顔にひと筋の汗を流した、下の妹の彩音。
 少し向こうでは白髪の多くなった祖父が、柔和な表情で彼を見ている。
 たあ!たあ!という三人の掛け声が重なり、何度も続く。
 毎日の朝の日課だった、竹刀の素振り。
 これを終えてから、家族みんなで朝食を食べていた。
 大槍家は皆早起きだ。この時も、豊は祖父母、父母、妹たちと、のんびりと和風の朝食を食べていた。
 玉子焼きを食べているうちに、意識が夢から立ち去った。




「あ……夢か……」
 目を覚まして視界に入ってきたのは、早朝の光にうっすらと照らされている、ログハウスの天井だった。
「みんな、どうしてるんだろう……帰りたい……帰りたい……せめて……僕がここにいるって、伝えられたらいいのに……」
 離れ離れになった家族を思い出し、寂しい気持ちになった豊は、いつしか視界が滲むのを抑えられなかった。
「あ…」
 自分が静かに泣いていた事に気づいた豊は、素振りをして気持ちを整えようとした。
 身を起こして、剣を手にしようとして。
「あれ?」
 ギョールがいなくなっていることに気づいた。
「誰もいなくなった……か」
 どうにも言いようのない寂寥感を、感じてしまう。
「涙を見られずに済んだし、まあいいや、素振りしてこよう」
 豊が外に出ると、まもなく夜明けを迎える空が光の加減で群青からオレンジへとグラデーションを描き、二つの月は反対側に沈もうとしていた。
 二つ並ぶ月の存在に、「お前のいるここは異世界なのだ」と宣告されているような、圧倒するような何かを感じさせられ、家族と離れ離れだという事を、再認識させる。
 それでも寂しさを振り払うように、豊は歩き出そうとして、妙に騒がしい事に気がついた。

どうやら、喧騒は事務所からだった。
誰かがこちらへ向かってきたのか、足音に視線を向けるとちょうどこちらへ向かってくるエイプリルの姿があった。
「何かあったんですか?」
宿泊棟担当のエイプリルに豊は尋ねる。
「緊急招集が発令されました。事務所から連絡が今来まして、アーマルド二体が遺体で発見されたと。今、寝ている冒険者を直ちに起こして事務所に向かってください。あなたは男性棟をお願いします。私は女性棟の方を起こしてきます」
矢継早に豊に言うとエイプリルは足早に女性棟へと向かっていく。

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