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淫蕩王伝―再誕―
官能リレー小説 - ハーレム

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淫蕩王伝―再誕― 121




 ここで、時計の針は少し戻る。豊たちがパッシェンデール遺跡で戦っていた頃……
 高い城壁を巡らせた中に数本の尖塔を持つ、荘厳な黒く輝く石造りの巨大な城郭。
 尖塔に囲まれた、巨大な巌のような主殿。その大広間には大魔王が重臣を前に謀議を行っていた。
 黒曜石を思わせる双角を持つ、大魔王ゲヘナの重々しい声が、静まり返る広間に流れる。
「イシュタル大陸の端に張り付き折る敵兵を追い落とすためにも、これに背後から支えるヘブンズゲートの奴らの両用艦隊やローレンシア大陸の国々は目障り。人間どもは連合してヘブンズゲートに拠り、裏支えして我々の攻め手を防ぎ留めおりなかなか兵が進めぬ。
 故にローレンシアをも攪乱すべく魔物どもの育成に始まり様々な攪乱作戦を命じておるわけだが……誰ぞ、申せ」
 四臣を睥睨しつつ現況を述べた大魔王ゲヘナに対し、まず発言したのは片眼鏡を着用したインテリタイプの魔族だった。
「興味深い情報が手に入りました。聖剣アロンディートがパッシェンデール遺跡に眠っているようです」
 そこで彼は一度言葉を切る。すると大魔王ゲヘナが重々しく口を開く。
「竜殺しの聖剣であるか」
 片眼鏡の魔族、大魔術師にして四天王が一人、バルフォスは恭しく答える。
「左様にございます。パッシェンデールを襲いし蒼き竜、ネシェルを屈服せしめた後、所在不明となっておりましたが…」
 やや割り込むように、うるわしき色香を宿した声が入った。
「お待ちくださいませ、陛下、バルフォス殿。確か四十年前にもリンドバーグの近くにアロンディートが眠っているという噂が流れ、人間どもによる大捜索が行われました。
 なれど結局見つからず、失われたとされたのではありませんでしたか?」
 四天王と呼ばれる実力や色香ただよう声色の通り、妖艶な美貌の持ち主―――才色併せ持つその姿に邪神ルーゼンが美の神ティアラに産ませた娘と称えられる―――リーシアが立派な胸を張って軽く揺らせながら一歩前に出た。
 バルフォスは面白そうに軽く笑いながら、彼女に教え聞かせるように語る。
「リーシア殿、その件は我らとて承知しております。ネシェルを倒したのち所在不明になりし事も、前にもこの剣の在処に関する噂が流れて人間どもによる捜索が行われたことも」
 慇懃に応じるバルフォスの言葉は、流れるように続く。
「ですがネシェルは封印されただけで滅んではおらなかったのです。そう、ネシェルを殺したと発表して封印に用いた聖剣アロンディートの所在を隠蔽したのですよ」
 そこで半秒だけ息を切り、続ける。
「恐らくは当時のパッシェンデール王家は誰かが勝手に封印を解くことを恐れたのでしょうな。 さもなくば実は倒しておらなんだと民心の動揺を呼ぶことを恐れたか…」
 そこで玉座からゲヘナの重厚な声が入る。
「面白いではないか。封印を解けば再びネシェルは暴れだすであろう。
 竜種は誇り高き故、人間に封じられたなど屈辱であろうからな。
 背後から人間の国を荒らすにはまたとない手。聖剣を奪うだけでなく油蔵に火を放つ如し」
 自分のほうを向いたゲヘナに対して、バルフォスは恭しく答える。
「ご賢察賜り、恐悦にございます。差し向ける者は…」
「では、我が配下から選び抜いた勇士を送ろうではないか」
 いかにも剛毅そうな、鋼のような巨躯をもつ男が力強い声を発している。
「ヴェライア殿?勝手な事を申されては困りますな」
 四天王が一人、豪傑ヴェライアの割り込みにバルフォスは引かずに抗議するが、リーシアもくすくすと微笑みながら声を上げ部下を推挙しようとする。
「潜入任務なら我が手の者のほうがよろしいでしょう。我らの誘惑の力をもってすれば人間など出し抜いて…」
「我が手の者がこの情報を掴んだ以上、我らが行いましょう。既に手筈を整えておりますれば変な横槍は不要」
 バルフォスはリーシアにも屈することなく冷静に反論する。
「方々お待ちなされ」
 漆黒のローブで顔以外の多くを覆った者が穏やかに発言し、リーシアはわずかな不快感を浮かべた。
 漆黒のローブの者は大魔王を見つつも、バルフォス、リーシア、ヴェライアの三名にも意識と視線を向けながらあくまで穏やかに提案を語る。
「欲の渦巻くこの世に功名争いは常と申せども、方々が相争われては陛下の為にならぬもまた真理。我ら四名の意向に関係なく決めませぬか?」
 皺のある顔に年齢相応に枯れてはいるが、幸福感を呼びそうな声。
「ノープス殿?」
 ヴェライアが怪訝な顔をする。
「籤でも引かせたいのかしら?」
 牽制する口ぶりでリーシアが疑問を示す。
 ノープス。邪神ルーゼンの最高司祭にして、四天王の一角を占める人物である。
 容姿こそ普通に高級魔族なのだが、その雰囲気と物腰は服装さえ変えれば、邪神ルーゼンではなく他の善神とされる神の司祭と言われても信じてしまいそうな人物でもある。
「陛下」
 ゲヘナに呼びかける声がして、全員がそちらを向いた。

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