淫蕩王伝 120
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「あわわわ……」
突如として豹変したリュージュにアナシアは言葉を失っていた。
村のあちこちで怒号と悲鳴、そして女の嬌声が巻き起こる。その中心にはリュージュがいるのだろう。
アナシアは思い出していた。
『淫蕩王』という存在を……。
淫蕩王とは女と見ればみさかいなく犯し、男と見れば雑草のごとく踏みにじるというもの。
今の彼はまさに淫蕩王であった。
「リュージュさんは異界の光じゃ……」
震えながらつぶやくアナシア。
「異界の光が希望の光とは限らないわな」
ふわっと風が巻き起こる。隣には例の悪魔、純一が居た。
「ふたを開けたら災厄申し子でしたってわけだ」
「あ、あなたは?」
「俺はあいつの古い友達さ」
「友達……、あ、あのとめてください! このままじゃ」
「無理言うなよ。あんな凶暴なやつ、逆に俺が殺されるっての。つか、あんたもここに居たらやられるぜ?」
「やら……」
「今のあいつ、我を失ってるな。チ○コが意思を持ってるみたいだ」
「そんな! どうにかならないのですか?」
「どうにもならない。あいつはこのまま淫蕩王として、死ぬか殺されるまで女を犯していくぜ」
「そ、そんな……」
村のいたるところで聞こえる悲鳴。今も女を求めて駆け回るリュージュ。その姿は餓鬼そのものだった。
淫蕩王として目覚めたリュージュは、フィルガイアの歴史に黒い黴のような存在として記されることとなった。
淫蕩王伝 完