「エスメロード！」
デマンドが駆け付けた。

「デマンド…」
「デマンド様！お久しぶりですわ」

「セレニティに何を言った！？」
デマンドは怒り、エスメロードに掴みかかった。

「あら…。暴力はいけませんわ、デマンド様。セーラームーンが髪の毛を切ったようなので『失恋でもしたのかしら？』と聞いただけですわ」

（…失恋？まさか…。セレニティが髪を切った理由とは…！）
デマンドの動きが止まり、エスメロードは解放された。

「ごほっ！」
エスメロードは咳込んだ。

「今更…。何をしに来たんだ？」
「デマンド様とセーラームーンに婚約者をご紹介しようと思いましてこちらに来ましたの」
「婚約者？わざわざ私達に紹介するほどでもないだろう」

「エンディミオン！」
（エンディミオン…って、まさか…！？）

一人の男がエスメロードに呼ばれるままやって来た。

「お前は…！」
「まもちゃん…！！」

その男は地場衛だった。

「あら、あなたの元彼？だけど今はデマンド様がいるのだから、私が誰と婚約しても構わないんじゃなくて？」
衛はうさぎをちらりと見た。
「エスメロード。そろそろ帰ろう」
「え、ええ…」

エスメロードと衛はその場を去った。

（まもちゃん…。エスメロードに操られちゃったの…？本当に婚約したの…？）
うさぎはその場に倒れてしまった。

「セレニティ…？セレニティ！！」
デマンドはうさぎの体を揺すった。

「何やら騒々しいですね…。プ、プリンセス！？」
ボヌールはうさぎの所に駆け寄った。

「…医者を呼んでほしい。私がセレニティをベッドまで運ぶ」
「は、はい。ただ今！」

デマンドはうさぎを寝室のベッドまで運び、寝かせた。

「まもちゃん…。エスメロードと結婚するの…？」
うさぎは涙を流した。

「セレニティ…。くっ…！」
デマンドは寝室を出た。

「デマンド様！お医者様にお電話しました。今こちらに向かっております」
ボヌールがデマンドの所にやって来た。

「ああ、ありがとう…」
デマンドは珍しくボヌールに礼を言った。
「いかがなさったのですか？プリンセスと散歩に行っていたのだと思っておりました」
「さっき、セレニティと散歩に出ようとしたらエスメロードとタキシード仮面がいた。そしてエスメロードがタキシード仮面と婚約すると聞いた瞬間、セレニティが倒れてしまった」
「えっ…。他に何か聞いておりませんでしたか？」
「エスメロードがセレニティに…」

「お医者様がやって来ました！」
乳母が数人の医者を連れてやって来た。

「お待ちしておりました、この部屋です」
ボヌールが寝室のドアを開けた。

「どうぞ、お入りください」
「失礼いたします」
数人の医者が寝室に入っていった。

「デマンド様。朝食をご用意いたしますので、食堂に参りましょう」
「…あ、ああ」

デマンドとボヌールは食堂に行き、デマンドがドアを開けたらサフィールが椅子に座っていた。

「兄さん、おはようございます」
「おはよう」
デマンドは椅子に向かい、座った。
「朝から騒がしいようですが、何かあったのですか？」
「…セレニティが倒れた」
「えっ…？」
「今朝、セレニティと散歩に出ようとしたらエスメロードとタキシード仮面がいた。そしてエスメロードがタキシード仮面と婚約すると聞いた瞬間、セレニティが倒れてしまった。その直前にエスメロードが『セーラームーンが髪を切ったのは失恋したからではないか？』と言っていた」
「え…」

「今のお話、しかと耳にしました」
ボヌールがデマンドとサフィールのテーブルに朝食を置いて行った。

「プリンセスのご様子を見て参ります」
ボヌールは食堂を出た。

「私も…」
デマンドは立ち上がった。

「兄さん、食べましょう。いただきます」
「…くっ…」
デマンドは椅子に座った。

「いただきます」
昨夜の夕食時とは違い、二人は会話もせずに食事をしている。

（セレニティ…。タキシード仮面のことを忘れるためにあの長い髪を切ったというのか…！？）

《…デマンド。あたしのヘアカットが終わるまでの間、席を外してくれない？》
「女性というのは…。失恋をすると髪の毛を切るのか？」
「え…？僕もよくわかりませんが、そういう人もいると思います」
「そうか…」
「（兄さんって、本当に世間知らずだな…）」

二人は食事を終えた。

「ご馳走様でした」
「ご馳走様」

ボヌールが食堂に戻って来た。

「ただ今戻りました。プリンセスのことなのですが…」
「どうしたんだ？」
「何かあったのですか？」

「…2・3日間、プリンセスを居住区の大病院の個室に入院させることにいたしました。もう病院に向かっております」
「……！！」
デマンドとサフィールはボヌールの言葉に驚いた。

「妊娠していて、異常でも見つかったのか？」
「いいえ。そのことも考慮してエコー検査をしてもらったのですが、妊娠はしておりませんでした。ただ…」
「ただ？」
「どうなさったのですか？」