月野うさぎとプリンスデマンド 24
じゃあ1年も前に?
「どうしてっ、どうしてそんな酷いことを……!」
「酷い? 我々は元々クリスタル・パレスを攻略するつもりだった。それを実行したまでのこと。おまえさえ手に入れば地球に未練などない」
「あたし……?」
じゃああたしが此処に来たのがいけなかったの!?
あたしのせいで、地球は…………
「セレニティ」
デマンドはうさぎの感情には敏感だ
うさぎを腰を自分の元へ寄せ、小さな子供をあやすようにいういう
「総攻撃が決定し、おまえを迎えに行くよう命じたのだが……
おまえがこうして無事に手に入った。なんの未練もなく地球を攻撃することが出来たよ」
「……そんな……」
「結婚式後は私と共に公務に参加してもらう。
これからは常に私の傍に居るのだ」
デマンドはうさぎを愛おしげにそう告げる
「………ずっと貴方の傍に……?」
「私の妃だ。夫の傍に居て当然だろう?」
「!!」
……妃…… あたしは望んで妻になったんじゃない!
「……デマンド…あたし…貴方と結婚なんかしないわ」
そうよ あたしの守るべきものがないなら………この人に従う必要なんかない
この人の妃になんてならないわ
「………セレニティ! ふっ まあ良い」
怒るかと思ったのに、デマンドが鼻で笑った
うさぎを抱き寄せたまま
「結婚しようがしまいがおまえは私のもの。結婚せずともこのままずっと我が元で暮らすのだ。私の元から逃げ出すなど不可能だ」
「………………」
「やはりそうするおつもりでしたか」
割ってはいる声
誰?
「サフィール」
部屋の入口に気怠そうに腕を組み、もたれかかっている姿が目に入る
デマンドのそばへ向かうように歩き出した
「サフィール………」
うさぎはデマンドの腕の中
この腕から逃げたいのに逃げられない
「兄さん………いつまでも騙し通せるものではありません」
いつも冷静なデマンドの顔が僅かに引きつった
騙し通す? なんのこと?
サフィールがうさぎを見つめて
「アロンとマナは君と兄さんの子供ではない」
「えっ!?」
「サフィール!」
デマンドが制止しようとする
あたしが知ったらいけないことなの?
重い空気の中、サフィールが口をひらく
「あの2人は正真正銘、君と兄さんの子だ。だが、君はシルバーミレニアムのもの。あの2人は兄さんの………ブラックムーン一族の子だ。兄さんと結婚して君がブラックムーン一族にならないのならば、このまま子どものそばにいさせる訳にはいかない。あの2人は渡さない!」
「!!」
考えもしなかった……
あの2人はブラックムーンの……シルバーミレニアムの血をひいてるの…?
「このまま寵姫でいてもいいが、覚えておけ、アロンとマナは兄さんの、ブラックムーンのもの。シルバーミレニアムには渡さない!!」
「サフィール!」
デマンドがサフィールを宥めようとする
「本当のことです。あの2人はブラックムーンの後継ぎとして育てるべきです」
「その通りだが、あの2人はまだ赤子だ」
近くでデマンドとサフィールのやり取りが聞こえる
あたし………アロンとマナのそばにいれないの?
結婚……しなきゃいけないの?
結婚しなくても、ここから出られないの?
デマンドの元でこのまま一生暮らすの?
「セレニティ。気にするな」
デマンドがあたしを宥めようとしてくる
「……………あたし……ます、…あたし……………あなたと…結婚します」