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宮野志保≠シェリー
官能リレー小説 - 二次創作

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宮野志保≠シェリー 4

現実に引き戻された彼は見透かされた事が恥ずかしく外方を向き哀から視線を放す。
「当たり前じゃねーか。不便だったぜ?小学生の身体じゃ出来ない事の方が多いし、それに……」
「……蘭さんを、悲しませる事になるものね」
哀が再び悲しくて切なそうな表情を浮かべたがコナンは気付かなかった。
それはほんの一瞬でやはり直ぐ元の表情に戻っていたからだ。
二人の間に沈黙が訪れ気まずい雰囲気が支配する。
「……私は、当分元には戻らないわ」
その沈黙を破ったのは意外にも哀だった。
驚きの表情と共にコナンは哀を見詰める。
「なんでだ?」
「……貴方、あの子達の気持ちを考えてあげた事がある?」
コナンは首を傾げる。
哀が言う『あの子達』が頭に浮かんで来なかった。
それを察したのか哀は深い溜息を吐き、呆れた表情をする。
「本当に全然考えていないのね。あの子達と言ったら、他にいないじゃない」
「……誰の事だよ?」
コナンの言葉に哀が更に呆れた表情をしたので、少し不愉快だった。
「少年探偵団のあの子達に決まってるでしょう?」
言われてコナンははっとする。
元の姿と本来の生活に戻れる事から、確かに彼等の存在を軽視していた。
コナンが居無くなる事だけでもあんなにショックを受けていたのに、続けて哀まで彼等の前から消えてしまったらどんな思いをするだろう。
それは愚問だ。分かり切っている。
考え込んでしまったコナンを横目に哀がクスリと微笑する。
普段決して拝見出来ない優しげな微笑みにコナンは一瞬たじろいだ。
その様子に哀は笑みを自嘲的な物に作り替え口を開く。
「気にしなくても大丈夫よ。貴方は元に戻って蘭さんの事を考えてあげて。後の事は私に任せてくれればいいわ」
言われてコナンは哀が元に戻らない理由をやっと理解したのだった。
哀は彼等の支えになるつもりなのだ。コナンがいない淋しさの。
この時ばかりはいい加減鈍感な自分に嫌気が指した。
コナンは再び準備に取り掛かる哀を見詰める。
「でも、お前はそれでいいのかよ?」
言うべきかどうか悩んだ言葉を、コナンは思い切って発する。
彼女が一瞬小さく肩を揺らしたのを見逃さなかった。
「……どうして?」
「当分とか言っときながら、お前戻る気無さそうに見えるぜ?まあ、確かに『宮野志保』より『灰原哀』でいる方がお前には楽だろけど……でもそれって、明美さんの願いを、裏切る事にならないか?」
彼女の最愛の姉――今は亡き『宮野明美』の名前を持ち出した事で彼女の顔色が見る見る変わり、肩の揺れが激しさを増す。
哀は俯き唇を強く噛み拳を握り締めた。
少年探偵団の彼等の支えになるなんて言い訳だ。本当は、何人もの運命を狂わせてしまったと言う罪を抱えた『宮野志保』を恐れ、逃げているだけだ。
コナンにはそれが分かっていた。
しかし、亡き明美の願いは彼女――『灰原哀』ではなく『宮野志保』が普通の生活を手に入れ、そして幸福に暮らす事であり、哀が本来の姿に戻らないなら明美のその願望は断ち切られる事になる。

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