METAL・MAX―新たな軌跡― 106
女将さんの怒りの一撃に事態は収集を迎え、残党で戦おうとするやつはいなくなった
本来ならこのまま掃討戦から追撃戦へとなるのだが、今回はあくまでも人間狩りが目標
これ以上体制を乱すわけにはいかない
いや、これ以上乱れようは無いのかもしれない
警戒に当たっていたアンドロイドは半数が中破から大破
パニクった奴らはあらかたロケット弾で負傷
「厳選されたって取るには難しいわね」
戦闘不能な負傷者を集め、数両の車に乗せでドックシステムで帰還させる
死亡者はオフィスが責任持ってDr.ミンチの元まで届ける(生き返るところまでは責任持たない)
「さて、どうしたものか」
黒騎士はにがり切った顔で唸る
このまま態勢を立て直して迎撃したいが戦力不足だから追い返したいのが本音だった
さらには先程の戦闘で急造部隊特有の諍いが生まれていた
何で俺を援護しなかった…
火線を遮る奴があるか…
援護できる距離を考えろ…
他人の獲物を奪ったな…
黒騎士の周りではガキの喧嘩が始まっていた
なだめる黒騎士、仲裁(両成敗?)の機関銃をばら撒くナターシャ。逃げ惑うハンターたち
そんな喧騒をよそにノエルは一人考えていた
「仕方がない。今回は作戦を放棄する」
騒動がひと段落したところで黒騎士は宣言した
食いしばる歯からはギシギシと音が漏れていた
黒騎士の背後に立つナターシャの手が黒騎士の握りこぶしをそっと撫でる
「ここで無理に作戦を続行した所で勝てる見込みも、人質だけを分捕って逃げることも無理だ」
ブーイングが湧き上がる中、ノエルはとっとと改造高機動車に荷物を詰め込み、帰り支度をするとそれに習ってポツリポツリとほかのハンター達も支度を始めた
ノエルは黒騎士に私宅が終わったことを告げた
「さっさと帰りたいわ。どうせ今回の人間狩りの集団からはもう、賞金は解除されたんでしょ?」
「いや。暫くはかかったままだろう。
ただ、仕留めた所で今回のターゲットと確認取れるのに時間がかかるだろうね」
ノエルは賭けに出ることにした
人の獲物の横取りを命令されたジャネットがここに来ていることに
ジャネットの戦闘能力なら人間狩り集団を壊滅させられなくても進行不能まで追い込めるだろう
そうなればこの先の街から再度召集ハンター達で救助に来れる
これはジャネットを頼るんじゃない。ジャネットを利用するんだ!
ノエルは黒騎士に現地解散する旨を伝えてツェットと出発して近くの岩陰に身を隠した