堕天使領域 2
目の前で膝を突き、肉棒を洗っているメイドの頭をベルゼが軽く撫でると、
メイドは顔を近づけ、亀頭を舌先でチロチロと舐める。
最初は石鹸の味がしていたが、やがて先走りの汁でその味は消えていく。
「その捕まった天使、ハニエルだ」
「ハニエル? あぁ、天界であなたが妹みたいに可愛がってた子ね」
ベルゼが軽く頭を押えると、メイドは肉棒を咥え込み、顔を前後させて扱きだす。
(人が話している時に)
……と思いながらも、アスタルテは話を進める。
「そうだ、ハニエルは私の手で堕としたい」
「そう、それは楽しみね。
皆には私から言っておくから、あなたの好きになさい」
「あぁ、頼む。それから、シャマード達はまだしばらく狩りを続けるそうだが、次の『サバト』までには帰ってくるそうだ」
話が済みアスタルテが浴場から出て行った後も、クスクスと笑いながらベルゼはメイドの頭をなで続けていた。
「フフフ……どういう風に堕とすのか、楽しみね」
【翌日・アポルオンの東・アラト山脈】
アポルオンの東の山脈を越えると、そこはベルゼ達の『神』ではなく、別の『神々』の領域である。
そうした混沌とした場所柄ゆえか、この山脈と周辺の森には、古くから様々な魔物達が生息していた。
魔物達の中には当然人を襲う凶暴な種もおり、そういった魔物を狩る事は、騎士や貴族達にとって自分の力や勇猛さを証明する行為とされていた。
ゼブル家では長女の『シャマード』と、三女の『ベリア』がこの狩りを積極的に行なっていたが、その目的は他の貴族達とは大きく違っていた。
【アラト山脈・ミノタウロスの洞窟】
岩山の洞窟に住む牛頭人身の魔物・ミノタウロス族も、そんな危険な魔物達の中の一つである。
彼等は雄のみの種族で、繁殖と性欲を満たす為に、知らず縄張りに踏み込んだ女性の旅人を襲っては、住処の洞窟に連れ去っていった。
その日も彼等は縄張りに踏み込んできたシャマードとベリア。それと数人の護衛らしき女性達を獲物と見做し、早速捕まえようと襲い掛かっていった。
しかし、護衛達が応戦しようと前に進み出るよりも速く、シャマードが手にした捻れた形をした槍を一閃。
次々と飛び掛ってきたミノタウロス達を、瞬く間に切り伏せていった。
更にベリアが、「エーイッ♪」という可愛らしい掛け声と共に投げた両手持ちのウォーハンマー(注・投げて使う物じゃありません)が、後方にいたミノタウロスの族長の頭を直撃。
首がありえない方向に曲がって倒れた族長を見て、残りのミノタウロス達は勝てないと判断して降伏してきた。
「みんなー、助けに来たよー」
洞窟に囚われていた女性達に、金髪の16歳ぐらいの少女―――ベリアが能天気な声で呼びかける。
女達はいきなりの事に、最初は何かの冗談か幻かと思っていた。