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デーモン シード
官能リレー小説 - 同性愛♂

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デーモン シード 3

その彼をして、内心ではデーモンシードの恐ろしさに心が震えていた。
「全く。何ちゅうものを造りおったのじゃ!水爆の熱で完全に焼き尽くせと言うのがわからんか!環境保護団体は騒ぐだろうが、地球気候にはまだ水爆実験数回分程度の耐久力はあるはずだ!こんなことになったからにはそいつらを説き伏せるのもお前等政治家の仕事だろう!え?だからダイオキシン程度でどうにかなる物でもないと言うておろうが!放射能でも難しいわ!チェルノブイリから数十年を経たプリピャチは多くの残留放射能が残るまま大自然に帰り、建物は樹木に埋まり、野生動物の宝庫になっておる!よいか、必要なのは全てを焼き尽くす超高熱じゃ!水爆しかないんじゃ!」
危機感に突き動かされた柳枝博士の言葉は次第に強い調子になってゆく。


「…しかし、現実問題あのデーモンシードがいかにヤバい代物だとして、頭の固い政治家連中が大量破壊兵器の使用を許可するとは思えんなぁ…」
日本軍の指揮官である久佐薙 敬二(くさなぎ けいじ)少佐がボヤくと、彼の副官である一条 大介(いちじょう だいすけ)軍曹が溜め息混じりに言った。
「…ですな。そうすると残る手段はただ一つ、人間が島に上陸してアレを駆除する…」
「ちょっ…マジっすか!?さっきの映像見たでしょう。島にはあの何倍ものヤツがウヨウヨしてるんですよ?死にに行くようなもんだ…」
この場には似つかわしくないパーカーとジーンズというラフな服装の青年、氷室 裕哉(ひむろ ゆうや)が信じられないといった表情と口調で突っ込む。
それに対して在日米軍の指揮官ジョージ・サンダース少佐は微笑を交えて言った。
「だが今の所それしか方法が無いんだ。仕方無かろう。なに、心配する事は無い。君はここ、現場から1マイル以上離れた海上に浮かぶ旗艦の司令室で大人しく画面の前に腰掛けてりゃあそれで良いんだ、坊や」
「…そりゃ有り難いっすね」
彼らの会話は上層部からの連絡により断ち切られた。

「司令!高麗連邦政府からです!」
「繋いでくれ。」
すると、最高指導者である連邦主席の丸顔が通信画面に現れた。
彼の発言を要約すると、「高麗連邦政府は核攻撃に協力する用意がある」ということだった。
「半島統一以前から、奴は自らの核保有の正当性を完全に認めさせたがっていた。ここはそのまたとない機会と踏んだのだろうな。何しろ「核で人類を救った」という名誉が手に入るのだ。」
横で司令に立ち会っていた柳枝博士が言った。
半島では戦略核の開発に成功した北が、長年裏から育ててきた親北派による南の政治混乱を突いて吸収合併に成功、半島の統一に成功していた。

「…よぅし!渡りに船とは正にこの事じゃ!さっそく2、3発ほど島に落としてもらえ!」
「そうはいきませんよ博士」
興奮して鼻息を荒げながら怒鳴る柳枝博士に久佐薙少佐は冷静に言う。
「何故じゃ!?まだ政治的理由がどうこう言う気か!?」
「ハァ…それだけじゃないんだ。ドクター・ヤナギエダ…」
サンダース少佐が溜め息混じりに言った。
「あの島には現在逃げ遅れた研究員ほか施設職員、合わせて約50名が残っている。あなたは彼らを見殺しにしろと言うのか?…どっちみち核兵器はおろか、通常爆撃すら行えないんだよ」
「そんなもの見殺しにしてしまえっ!!」
柳枝博士は唾を飛ばしながら叫んだ。
「お前達まだ事態の深刻さを解っておらんのか!?全人類60億の命運がかかっておるこの時に、たかが50人の命がどうこう言っておる場合ではないじゃろうが!!」
「「……」」
久佐薙少佐とサンダース少佐は黙って顔を見合わせ、それから部下に指示した。
「あ〜、君達、柳枝博士は少しお疲れのようだ。船室にお連れして暫く休ませて差し上げろ」
「はっ!さぁ博士、ご案内いたします。こちらです…」
二人の兵士が両脇から柳枝博士を取り押さえる。
「な…何じゃお前達は!?離せ!離さんか!おい!ワシの話を聞け!あれは本当に危険な…!」
柳枝博士は暴れたが、いかんせん老人の腕力では若い屈強な兵士には適わない。彼は抵抗むなしく連れ出された。

「…ねぇ、久佐薙さん、本当に良かったんですか?あのジイさんの言う事聞かなくて…」
柳枝博士が連れて行かれた出入口を眺めながら氷室 裕哉は怪訝そうな表情で久佐薙に尋ねる。
「言っただろう?島には人間が残っていると…」
「それに日米両政府としても穏便に事を済ませたい…でしょ?」
「そうひねくれた事を言うなよ。我々としても助けられる者は出来る限り助けたいと思っている…ジョージ」
「何だ?クサナギ」
「さっそくだが部隊の上陸地点について…我々は南側の海岸から上陸して島内の生存者の捜索活動に当たろうと思う。米軍はどうする?」
「我々は落下傘で直接デーモンシードの真上に降下してヤツの核(コア)を叩く!」
「よし、その作戦でいこう!」
二人の会話を聞いていた氷室は小声でボヤく。
「んなアバウトな作戦で大丈夫なのかよ…つかマジで上陸すんのか」

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