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官能リレー小説 - 同性愛♂

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tokubetsu 8

「藤原龍之介の持ち物から出てきた1枚です。
身内を探すのに何か役立つのではないかと、コーピーしておいたものです。」

紙の中の青年は、清潔そうな直毛の前髪を風に靡かせ、爽やかに笑っていた。
それはどこか龍之介に通じるような、セックスを感じさせない笑顔ではあるが、
かといって男としの魅力が無い、女々しいユニセックス的な感じでもなかった。

「なかなかの好青年でしょ?
その筋の者が手っとり早く金を回収するのに、25とはいえ、藤原一馬の身体を使わない訳がない。」

「なるほど・・イケメンだったのが裏目に出たのか・・」

「性欲を感じさせない、朝ドラの出演者のような面々の隠れた姿を見たくなるのは、万人の欲望かもしれませんな。」

「ええ・・」
江口は生返事をしたものの、藤原一馬がどんな好青年であろうが、自分と同じ性を持った"男"に対して性欲を抱く輩の気持ちが理解できなかった。

要するに自分は、全くノン気なのだと江口は思ってはいたが、そんな経験が全く無い訳でもなかった。
大学時代、寮の相部屋になった後輩がゲイだったのだ。

あれは・・寝苦しい猛暑の夜だった。
何時ものように酒に酔い、トランクス1枚で熟睡した筈の江口は、その暑さに目覚めた。
汗に混じり、嗅ぎ覚えのあるあの香りが鼻孔を掠めた。
薄く目を開いたその先に、股間にティシュを宛てがった後輩の瞳が江口に向かい輝いていた。

江口は見てはいけないものを見たかのように、寝返りをうち背を向けた。
膝まで下がったトランクスは暑さの為に自分で下ろしたのだと、信じたかった。

そんなことは今までに何度もあった。
気がつけば全裸で寝ていることは幾度となくあったし、精液でシーツが濡れていたことも1度や2度ではなかった。
それでも、酒を飲むと記憶を無くす気質の為の失態・・
相部屋では自慰も気安く出来ない為の夢精・・そう考え、敢て気にはしなかった。


それが分かったのは、後輩の通夜の晩だった。
バイク事故に合った後輩は、20歳そこそこの若さで逝ってしまったのだ。

親族から形見として渡された携帯・・
それは保存された江口の画像を見てのことだと後々分かった。

数百にも及ぶ保存画像はすべて江口だった。
それも、赤面せずにはいられない恥ずかしいものばかりだったのだ。

それを見た当初は、嫌悪に近い感情にも駆られたが、月日がそう思う自分こそを恥じるべきだと思えるようになった。
屈折した愛情故に、オープンにできなかった後輩が哀れに思えてならなっかたのだ。
それは自分が女に向ける欲情と同様に、後輩は生まれた時から持ち合わせた性癖に過ぎないのだ。
ノン気な自分が同性である男に興奮しないのと同じように、後輩は女に対して興奮などはできなかったのだ。
もしも自分が、女性と何年も同室でならなければならない状況におかれ、その女性が自分を性的対象とすら見てくれなかったら、自分も後輩と同じ行動に出たのではないか?とすら思えた。

そして自分に向けられた後輩の欲情を薄々感じてはいながらに、それを無視するがごとく、逃げていた自分が情けなかった。
身体を合わせることは出来ないにしろ、内面の部分でもっと近づくことは出来た筈なのだ。

この後悔にも近い後輩への江口の思いが、今回の藤原龍之介、その兄である一馬に対して、必要以上に向けられたのはいうまでもなかった。
龍之介と一馬を救うことこそが、後輩への供養になるのだと、江口はどこか自分を言い聞かせていた。


藤原一馬が勤めるエスコートクラブへの潜入には、龍之介を担当した伊藤医師が大いに役立った。
高級会員制であるが故その敷き居は高くはあったが、彼の大学病院の肩書きは、二つ返事で会員承諾され、その紹介である江口の身分を問うことはなかった。

「伊藤さん、申し訳ないです。こんな所まで付合っていただいて・・」
ネオン煌めく繁華街の交差点で江口は伊藤医師と待ち合わせた。
「こんな僕でも役に立ててよかったです。それに藤原一馬のことは僕だって興味がありますからね・・」

病院で説明を受けていた時の白衣姿とは違って、濃紺のジャケットとベージュのパンツという私服の伊藤医師は、自分よりもかなり若く感じた。
それはとても清潔そううで、立ち上げた短髪の頭と共に、彼にはとても似合っていた。

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