tokubetsu 6
のし掛かるように倒れ込んだ一馬の身体が密着し、心臓の音が重なった。
俺はその余韻を楽しむべく、その頭を抱きかかえた。
しかしそんな微睡みは、映画やドラマで観るようには、長くは続かなかった。
『ブッバ!』という、凡そロマンチックでは無い音量と共に俺のモノは一馬の後孔から抜け出した。
一馬は慌てて起き上がり、後孔にティシュを宛てがう。
数十枚ものそのティシュは、直ぐに水分を含み、その役目を終えていく。
それ程に、俺は大量の精液を吐き出していたのだと、ちょっと恥ずかしくもあった。
後孔から醜音を響かせて、見てはいけないような、
こっちが恥ずかしくもなる、そんなスタイルをとりながらも、
一馬は俺が胎内に放った精液を吐き出していった。
そんな一馬を横目で見ながら、俺も自分の身体に付着した一馬の濃いい精液を、ティッシュで拭き取っていた。
「俺とこんなことになって、一馬は後悔はしてない?」
一通り吐き出しのか、一馬はベッチョリと俺の精液を含んだティッシュをゴミ箱に放り投げた。
「…龍は弟だし…やっぱ罪の意識は感じているな…」
既に芯を無くした一馬のモノは、包皮が亀頭全体を覆い、縮れた陰毛の中から力なく、撓垂れていた。
「俺は一馬と出来てよかったと思っている…」
「ふっ…」一馬はポリっと鼻を掻き、照れたようにクシャと顔にシワを作った。
「龍にそう言って貰えると嬉しいよ…俺、ずっとこうしたかったんだ…」
「?…え…?」
一馬が何を言っているのか、俺は一瞬分からなかった。
「龍が家に来た時から俺…ずっと龍に欲情してたんだ……」
「ウソだろ?…だって、一馬はオンナ好きじゃないか…」
俺は一馬の女汁で黒くなっただろう、その皮を被ったモノを見詰めていた。
「俺は…自分の性癖を誤魔化す為にカノジョも作ったし、今までに何人かの女も抱いたさ…
けどな、イク時にはいつも…龍の顔を思い浮べたんだ…」
「………一馬…」
俺は一馬のモノから視線を上げた。
「今回のカノジョとの別れだって、『貴方は私を通して別の誰かを見ている』って、そう言われたんだ…
何度も身体を合わせると、どうしても隠しきれないものが、出てきちゃうんだよな…」
「その人も傷ついたんだと同情はするけど…それでも俺は、一馬がカノジョと別れて…嬉しい…」
「?…リュウ?…」
「俺と一馬は行きずりで寝たんじゃ無い…カノジョを忘れる為に俺と寝た訳でも無くて、
ちゃんと、なるべくしてなったんだって…今分かったよ…
………俺も一馬がずっと好きだった………」
一馬は俺の言葉に驚いたのか、顔を傾けながら、目を大きく見開いた。
そんな頬を両手で挟み込み、俺は今日何度めかの口づけをした。
・・・・膝に当たった一馬のモノがヒクリと動くのが分かった・・・
一馬の昂りを今度は、俺が受けていた。
その排泄感にも似た、始めての感覚に俺は戸惑い、一馬の身体に必死にしがみついていた。
耳元で発っせられる一馬の言葉・・・
「俺たちって…悪いことしてんのかな?…」
その小さな囁きは、俺の喘ぎが…かき消した…
そんな俺の長年の思いが叶った翌日…
俺たちの両親は自動車事故に巻き込まれて他界した…
それはまるで、前日に俺たちが禁危を犯した代償のように…
そんな後悔のような居畳まれない思いに、俺と一馬は苛まれた…
そんな二人に、悲しみに浸る時は無かった。
顔も見知らぬ親戚たちが集まり、藤原家の財産は一部始終を持っていかれた。
挙げ句の果てには、父親が新しく初めた事業の借金までをも背負わされたのだ。
16の龍之介はもとより、世間知らずに育った一馬すら、直ぐ様に金融会社の餌食となった。
それは、一馬と龍之介の、そのイケてる容姿が災いしたのだ。
既に25の一馬は、男女問わず相手にしなければならない、風俗業に強制的に勤めさせられ、
18前の龍之介は、ボーイズマニア専門の、公にはできないクラブで働かされた。
已む無く引き離された龍之介と一馬…
それは、二人が念願叶い結ばれた日から、たった二週間しか経ってはいなかった。
休み無く客を取らされるという、劣悪極まりない環境での生活が二年を過ぎたころ、
そんな悪徳な商売が警察に摘発され、龍之介が自由の身となれたのは、2年後の18になった時だった。