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方陣の忍者
官能リレー小説 - 同性愛♂

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方陣の忍者 2

屋敷の方もやはりおかしい。時折遠くに槍を持った者の影が横切るのが見えるだけで、寂れた雰囲気がある。
しかし、一応の手入れはされているようなので完全な廃墟というわけでもない。
とりあえず、外観から簡単に屋敷の構造を見直してみる。
開け放たれた扉の向こうに大きな間が広がっている。
家臣たちを召集する時に使用する広間なのだろうか…
その背面に置かれた屏風に描かれる若武者に、時慧は眉をしかめた…
馬上で刀を振りかざしながらも着衣は乱れ、幾本もの矢をその逞しい身体に受けていた…
瀕死の時を迎えようとしているにも関わらずその若武者は、股間を起立させ、その袴の頂を濃く変色させているのだ…

この館の主人は男色か?…それはこの屏風画を見れば容易に想像は出来ることだった…
女人軽視、嫌悪者が多いこの時代、それが決して珍しいことでは無いのは時慧にも分かってはいたが、その趣向を全く持たない自分にとっては、ただただ悍ましいことにしか思えてなら無かった…

時慧はなんとなくだが頭首の言う意味がわかってきた。
この趣味は精神を乱す。それらの方面に無知な子供でなければ、影響を受けてしまうだろう。
独断で屋敷に侵入した挙げ句心を乱されるのは恥だ。時慧は相変わらず人の気配の希薄な廊下を走る。
大体の構成だけが分かればそれでよかった。
もし「あの子」が窮地に陥った時、助ける道筋さえ掴めれば…それでいいのだ。
時慧はその"もしも"が無いことを誰よりも願い…単独でここまで来てしまったといってよかったのだ…
(早いとこずらからねーと…)
もし自分が捕らえられでもしたら男色の餌食になるのだろうか?…
そう考えただけで虫酸が走った…
とは言え、禁欲を尊ぶ渡岩流において、時慧の"男精"は充分に溜まっていた。
例えそれが自分の趣向とは異なる相手であったとしても、心乱されないという自信は…無かった。

代表者たちの間でも異例の早さで副頭首まで出生した時慧にとって、渡岩流の教えこそがその為す術だった。
故に方術を誰よりも早くに収得し、厳しい戒律から習わしまで、その教え総てを忠実に体現させてきたのだ。
それは勿論、性的な意味も含めた禁欲的生活も然るべしである。
とはいえ時慧とて健康なる男であることに変わりはなかった。
人知れず、締め込みを洗わねばならないことは常だったのだ。
そんな自分を怨めしく思いながらも、表では頭首電双への忠誠を誓い、部下誰からも慕われる副頭首としての顔を演じてきたといってよかった。

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