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方陣の忍者
官能リレー小説 - 同性愛♂

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方陣の忍者 1

古びた小屋の中で渡岩流の代表達が向かい合ってなにやら相談をしている。
いかにも格上らしき男がよれよれの紙を取り出す。屋敷の地図だった。
そして口を開く。
「この任務はあの子にやらせてみるか…」
隣に居た色黒の男が返す。
「そんな。いくらなんでも若すぎる」
額に小さな傷のある男も和した。
「そうだ…無理がある」
だが、その反論に格上の男の考えは変わらなかった。
場の空気がその「あの子」とやらを実戦に参加させる方向に傾いている。
任務の内容自体は簡単だ。屋敷に侵入し動きを探り情報を盗み聞き。
しかし、わかりやすい任務と言っても危険なのに変わりはない。屋敷内には武装した者が大勢居る。
そんなところにいきなり少年を潜入させるとは。頭首の電双らしからぬ奇妙な作戦だ。
もう誰も止めなかったが、どことなく不穏になってきた。最初に沈黙を破ったのは電双だ。
「あの屋敷はなにかがおかしい。だからこそ空気に飲まれないような初々しい少年が投入されるべきなのだ」
返す言葉がなかった。真意がよくわからなかったので。
しかし、妙な説得力だけはある。
こうしてよくわからないままに「あの子」の初実戦が決まってしまった。
少年をたった1人で敵のうようよ居る屋敷に投入するという糞としか言いようのない作戦を誰も止める事が出来なかったのだ。
部下達は気が気ではない。
彼が尋問されてこちらの秘密を喋ってしまえば、大問題だ。
事態を重く見た副頭首である時慧は独断で屋敷とやらの下見をしに向かった。
時慧は意外なほどあっさりとその屋敷にたどり着いた。とくに重要視されていないらしかった。
中立らしき村人を数人見かけたぐらいで妨害は一切無し。
まあそれが普通だろう、子供にやらせる任務はこれくらいの難易度がちょうどいい。
しかしその、問題の屋敷はどこかおかしかった。
高い塀。全体的に牢といった雰囲気で、中を見る事が出来ない。
大商人の屋敷にたまにそういう構造の物があるが、それとも異質に思えた。華やかさも人の活気も無い。
「どおりで適当な見取り図しか用意できないわけだ…」
時慧は塀に釘を刺し登り始める。とりあえず中を確認しなければ話にならない。
何の弊害も無く、塀の上までたどり着く…
これならば簡単に潜入も出来た筈…ならば何故にこんな簡素な見取り図しか作成されてはいないのか…?
いやはやこれは作成人が手を抜いたに違い無いと、甘く考えてしまう…

音を消し、そっと敷地内に降り立つ…
これだけの家屋を構えていながら、庭には全く人気は無かった…

何故だ…?

その静寂なる空気に、とてつもなく厭な予感が頭を過ぎった…

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