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霧に包まれたコロシアム
官能リレー小説 - 同性愛♂

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霧に包まれたコロシアム 19

びっくりしたままの皇子をよそに、アドルウスは叫ぶ。
「おれの祖国が攻め滅ぼされたあの日……共に戦って深手を負った我が息子ケインに、苦しみを長引かせぬようとどめをさしたあの日に誓ったのだ!!…おれは 子どもを殺しはしない!! だから あんたを!! 絶対!! 放ってはおかんのだ!!!!」

『……アドルウス』

「わかっていただけたか、皇子よ?………あなたは確かに父殺しの罪人かもしれんが、俺もまた、子殺しの罪人、同じ罪を背負った者同士として」

『…もうよいアドルウス』
「なにがいいものか、子どもがわかった様なことを抜かすんじゃな…」

『もうわかったんだ、許せアドルウス』
「!?…」

『………鼻水を拭け、いいおとなが、恥ずかしくないのか?』

そう言ってからかいながらアドルウスの頬に触れる皇子の顔に、何年ぶりかの笑顔が戻ったのだった。

「さあ行こう、皇子よ」
ロータス皇子から生え出していた蔦を払いながら、アドルウスは立ち上がった。

『ぐずぐずするなアドルウス、こんなところに長居は無用だ』

「!?………やれやれ」
皇子の笑顔につられるように、戦士は歯を見せて笑い返した。
立ち去ろうとするふたりの背後で、濃霧のような花粉が急速に薄まって行く………。


乱交の中心となっていた皇子を奪われた石像の男達が花弁の隙間から一斉に手を伸ばす。しかし誰ひとり巨大花から出る事は叶わなかった。
花弁は閉じ始め、男達を中に引き戻して行く。
それだけではない、男達のモノにロータスの放出した触手に似た物が絡みついていた。
ロータスは外に引っ張り出されているのだから触手がある筈は無いのだが…。
皇子は背中のあちこちに残る緑の蔓のたばを、今や心強い供となったアドルウスにむしり取らせながら、コロシアムを歩み去ろうとしていた。

「おう、間もなく夜が明けるぞ? 皇子」
漆黒の星空が、徐々に薄紫の色に明るく染め上げられて行く。日が射し始めるであろう方角に広がるオレンジ色の岩山と砂丘を越えれば、とりあえずアドルウスの定宿のある集落にたどり着けるはずだ。
「……とにかく、俺の知り合いの店で湯を浴びてさっぱりしたら、名物のオオヤシガニの串焼きでも一緒に喰おう! 酸っぱいクゥワーシャの果汁を搾って振りかけると美味いことこの上ないんだが、皇子、酒は飲めるのか?」
元来陽気な性格の戦士の言葉であったが、
『……そう簡単にはゆかぬようだぞ?』
砂上に緑の液体を撒き散らしながらのロータス皇子の答えは、それに反して緊張に満ちていた。

皇子が細く尖ったあごを動かして示したそのわずか数十メートル先には、戦車3台と2百余名の重歩兵から成る軍勢が、銀色の甲冑を光らせて待ち構えていたのである。

「これはこれは」
勘に障る、少々高い声音が夜明け前の砂丘に響き渡った。
8人の奴隷に背負われた豪奢な輿に載せられたその人物は、まばらなあごひげをさすりながら、寝不足なのかわざとらしくあくびをして見せた。
「半年ぶりですかな、ローサリウス皇子……いや、前王デンドロビウム陛下を殺めたとがで幽閉されたにもかかわらず、塔を脱け出して逃亡した大罪人ロータスよ」

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