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『鵺と妖刀』妖気は伝染する
官能リレー小説 - 同性愛♂

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『鵺と妖刀』妖気は伝染する 1

「おーい!大丈夫だぞ!」
その声に応えるように、岸辺の草むらから人影が現れる。それは若い男だった。
年の頃なら二十代半ばといったところか。体格は筋肉質だが背は高くなく、肌の色は健康的に日焼けしている。
男は未だに警戒を解いていない様子で、声の主である山田佐次郎に近づきながら油断のない視線を送っている。
「あんたが俺を助けてくれたのか?」
「そうだよ」
「…そうか。礼を言うぜ。俺は五郎蔵というんだ。旅の途中で野盗どもに襲われて、命からがら逃げてきたんだが…くそっ!まだ手が震えているぜ!」
なぜ彼が狙われたのだろうか?佐次郎は少し疑問を抱いた。
服装は見るからに貧相だし、荷物も変な刀だけだ。襲う価値があるとは思えなかった。
野盗から逃げる際に荷物を捨てたのかも知れないが、それでも何か不自然なものを感じた。
「つかぬことを聞くが、野盗に狙われたにしちゃあずいぶん身軽なナリだな。大丈夫かい?荷物奪われちまったりしてないか?」
「あぁ、いや大丈夫だ。特に奪われたものはない……」
その時、五郎蔵が腰に下げていた変な刀にすっ…と手を当てているのが視界に入る。なるほど、訳ありな品なんだろう、だがこれ以上聞き込んでも警戒されるばかりだ。疑問は解決しないが、それはそれとして佐次郎は次の話題を切り出した。
「ところで、あんたあの道を渡ってたってことは、この先の山道抜けた先に向かってるんだろ」
「あぁ…そうだが…」
「さっきの連中、この辺りじゃ有名な野盗衆でな、ちょうどこの川岸から麓までの道は、あいつらの寝ぐらに近いんだ。そんな軽装じゃ生きて山を抜けらんねえぞ」
そんな……と、五郎蔵の表情が翳る。
「そこで相談なんだが、俺と一緒に来ないか?実は俺も向こうの山を越えていく途中でね、仲間を探してたところなんだ」
「いいのか!?助かるぜ!」
五郎蔵の顔色が明るくなった。しかし、彼の表情はすぐに曇ることになる。
「ただ一つだけ条件がある…あんたが持ってるその妙な剣、それを譲ってくれないか?見た感じ相当使い込まれてるみたいだが、相当な業物に見えるし何より金になると思うんだよ」
佐次郎はなぜか剣を欲していた。変な剣としか思えないのに、ただならぬ力を感じていた。

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