ショタなペット【第三部】 79
「お姉ちゃん、和己君、もう少し泳ごう。」
優花が言う。
「そうね。暑くなってきたし。」
風花が立ち上がる。
「そうですね。」
和己も後に続いた。その時である。数人の男が優花に話しかけてきた。
「なぁなぁ、彼女ぉ〜。俺らと泳がねぇ?」
「え?ちょっ……貴方達何よ!」
「良いじゃねぇか、少しくらい。」
「え……あ……」
優花がオロオロしていると
「貴方達、如何いうつもりなの?」
風花がプールサイドから言う。
「うぉ、俺こっちのが好みだぜ。」
一人がプールから上がり、風花のほうにやって来る。
「なあ、カラオケとか行こーぜ。」
男は風花の手を取った。
「貴方達!勝手に手を握るとはどういうおつもりですの?」
「その喋り方、ますます気に入ったぜ。」
その間、和己は携帯電話を操作しSPを呼んだ。近くにある百合宮財閥の事務所から一人のSPが派遣された。
「貴方達は私達を誰だか知っているのですか?」
風花は手を握った男を睨みつける。
「知らねーよ。こういう事から始まる恋って……」
「冗談じゃないわ!」
風花は男の手を跳ね除け声を荒げた。
「ずいぶんな態度じゃねえか。」
「私は百合宮財閥長女、百合宮風花よ。貴方の様な下劣な男と付き合うつもりはありませんわ。」
「百合宮の『お嬢様』か、『平民』じゃダメだってのか?」
「何を言ってるの?ちゃんと彼氏も連れて来てるわ。」
風花が指差した方向にいる和己を視て、男達は驚くが、更に風花に言い寄る。
そこへSPが駆けつけた。男達は
「やべっ!おりゃぁ!」
と、咄嗟に手近にあったシュノーケルを投げつけ逃げ出す。しかし相手は要人警護に手馴れたSPである。すぐさま男達を捕まえる。
「放せよ!コラ。」
「我々に抵抗したということで公務執行妨害、逮捕する。」
更に抵抗する彼らに対しSPは
「これより権限を行使する。」
と言い、男達に関節技をかけ、押さえ込む。
実際この状況を説明すればただのナンパということになるだけであった。男達は彼氏持ちの女に声をかけ、ナンパ失敗ということだけで済んだ。つまり罪には問われなかったのだが、焦ってSPに抵抗してしまったことが男達の命取りとなった。
「午前11時42分、逮捕!」
SPは「セキュリティー・ポリス」を意味する和製英語であり、対人警護を目的とした警視庁の警察官である。彼らに抵抗すれば無論公務執行妨害に該当するのだ。
「和己君が呼んでくれたの?ありがとう。」
風花は和己に礼を言う。
「ホント。助かったわ。私ああいうの全然慣れてないから。」
優花も和己に礼を言う。