ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 561
梯子をゆっくりと下り、庭に降り立つ。
「ああ〜、良かったです〜」
心底ホッとしたような声を上げる彼女。
僕もそう思いたいところだけど、いかんせんその格好がね…
「あ、ありがとう…」
お礼は言うものの、視線を合わせづらい。
「え、えっと…私、青山家のメイドをしております、水橋蘭といいます…」
「水橋さん…、蘭ちゃんって呼んでいいかなぁ?」
「もちろんでぇす。それで…貴方様がお嬢様のぉ…?」
「貴方様なんてよしてくれよ…僕は柏原匠、香澄の婚約者だよ。」
「ぅわぁ〜お会いできて光栄でぇすぅ〜!」
顔を赤らめて、僕の手を取ってくる蘭ちゃん…
嬉しいんだけどそうされると、隠していた手がぁ;…
「あ、あのっ、私、まだ、最近ここのメイドになったばかりなので」
「あー、うん、そうなんだね」
純ちゃんが辞めた、その代わりに入った2人のうちの1人なのね。
青山家に選ばれるだけあって、すごく可愛い。
「それよりも、さ、なんか着る服ないのかな…」
「えと、匠さんが着ていた衣服は…」
あっ、そういえばパンツとTシャツはソフィアちゃんの部屋だけど、それ以外は杏さんの部屋だったんだよね。
「実は杏さんの部屋に…」
照れながら僕は小さく言う…
「えっ…?」
目を見開く、驚いた顔がまた可愛いじゃないか…
「杏さんと、昨夜は何を?」
「2人で酒を飲みながらいろいろな話をしてたんだ。香澄は桜ちゃんと一緒だったからね」
「ああ…そうでしたね」
蘭ちゃん、表情が豊かで可愛らしい。
「とりあえず、立ち話も何ですから、中に入って…」