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初恋の人は
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初恋の人は 81

「奥様の件だけご容赦頂ければ、我々は後の事は関知致しません」

下手に出るような口調だけど、それでいい。
俺の争う相手は彼女じゃないのだ。

「分かったわ・・・そう言われると此方も仕事しやすいわね」

少し笑顔を見せた佐伯弁護士。
やや柔らかくなった表情から負けを認めてくれたようだ。
まあ、俺が勝ったと言うより家の力だ。
それを教える為に親父は直接交渉しろと言ったんだろう。

「これは個人的な話だけど・・・彼はもう駄目よ」
「そんな気はしていました」

佐伯弁護士の今の言葉に、この仕事が気が乗らないのだと言う感じを受けた。
まあ同じ女としてはそうなんだろうとは思うが、色々なしがらみで受けねばならない仕事だったのかもしれない。

「こちらとしては彼女の身の安全が確保できればいいので離婚と言う形になるかと」
「分かったわ・・・クライアントには奥様はあなた達が保護してると伝えるわ」

彼女の答えにホッとする。
とりあえず優樹菜の旦那は守れないが、最低ラインは守れそうだ。

この佐伯弁護士は思ったよりも話せる相手だった。
まあ、バックの力関係で物事が決まったようなものだから話せたのかもしれないが、とりあえずは良かったとしておこう。


その後、親父に報告しに行ったら色々と調べておいてくれた。
優樹菜の旦那の会社は急拡大させ過ぎて自転車操業で、結構ヤバい所からも金を借りていたみたいだった。

「お前の友人を救うぐらいはしてやれるが、それ以上は無理だな」
「それだけでも感謝してるよ」

優樹菜だけでも助かっただけいい。
ただ、離婚は必須だなあと思いながら陽菜にメッセージを送ると『そうなるよね』と勘付いたようなメッセージが戻ってきた。
きららはかなり事情通だったが、陽菜も芸能界にいるから裏の事もそれなりに理解してるのかもしれない。

親父に報告だけ済ませて別荘に向かう。
別荘には陽菜もいた。

「優樹菜は大丈夫か?」
「うん、落ち着いてるし多分駄目なんだろうなあって気付いてるみたいよ」

子供もいるし妊婦だしで落ち着いてるなら安全だろう。


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