初恋の人は 64
「AV女優も人気があればみんなチヤホヤしてくれるし、優しくもしてくれる・・・そして男優達は一般人より遥かにテクがあって女の扱いも上手い・・・でも欲張りな私達はそれで満たされないの・・・」
みどりの言葉。
そうなのだ・・・
俺がきららに優しくしようとチヤホヤしようと、それは彼女に関わる殆どの男がしている事なのだ。
更に言えば、俺はAV男優のテクや女の扱いには遠く及ばない。
そもそもきららは俺にそんな事を最初から求めていなかった気がする。
だから、今のきららがその答えなのだろう。
「こうやって無理矢理従わされる事が幸せ?」
「そう、私だってこうされてようやく旦那様のメスだと実感できて幸せになれたのよ」
うっとりとするみどりの顔はきららの今の顔と同じだった。
それを見ていると、彼女が幸せならこんな関係でもいいと思えてきたし、俺がきららに酷い事を出来なかったのはきららを失うかもしれないと言う己の心の弱さでしか無い事に気付いた。
そして、これできららとは一歩進んだ関係になれる気がしてきたのだ。
「コーくん、私、今、すっごく幸せ」
「そうか」
縛られ痛めつけられ見た目には「酷いこと」をされていたきららだが、その瞳は涙こそ溜めているもののとてもいい笑顔である。
普通の人間には理解できない。でもそれで良い。むしろそれが良い。
AV女優の世界は奥が深い。それを改めて知った。
そして、美味しい食事を終えて店を出た俺ときらら。
見送るみどりが『この後、旦那様以外に肌を晒したお仕置きをして貰います』と嬉しそうに言っていたのが印象的だった。
その折檻するシェフも、みどりに対する愛情が見えるようで、SMもただ痛めつけるだけでないと示しているようだった。
あんな関係になれればきららとの関係がまた変わる気もしてきたのだ。
帰り道のきららは俺の腕に腕を絡めてくる。
そして俺を見る視線は恍惚としていて、今までと少し違うような気がしていた。
「撮影から帰ってきたら、他の男とハメまくる淫らなメスにたっぷりお仕置きして頂戴ね」
うっとりとそう言うきらら。
「そうして貰えたら、私・・・コーくんのモノになれる気がするの」
「ああ・・・」
アンナとは真逆。
俺のモノになる証が痛みなのかもしれない。
「おかえりなさい」
自宅に戻るとアンナが夕飯の支度をしながら待っていた。すっかり日常の風景に馴染んでいる。
「どうでした?」
「なんていうか、AV女優の世界の奥深さを改めて知った気がするよ」
「ふふ、それはとても良いことだと思います」
きららは上機嫌でお風呂。
俺はアンナにコーヒーを淹れて貰い一服。
一服しながらアンナが夕食の準備をするのを眺めていた。
あえてアンナには普段から着物を着せて割烹着で家事をして貰っている。
和服に合わせて結い上げた髪とうなじがたまらなくいい。
これがきららだと煌びやか過ぎて生活感が無いが、アンナだと程よい生活感が出るのもいい所だ。
それと後ろから見て見事なのが尻だ。
胸の超乳ばかり注目しがちのアンナだが、尻も見事なぐらいの巨尻。
やや着物の厚みを調整しているが、着物を押し上げてパンツのラインがクッキリ浮かぶぐらいなのだ。
この生活感が程よくエロい所はきららや陽菜には無い所だろう。
そんな風に眺めながらアンナと雑談。
あの店での話が主な内容だ。
「私ならどんなハードなプレイでも構いませんよ」
「いや、春香は可愛がり倒すからな」
アンナとSMプレイする気は今の所無い。
多分やればアンナは従順なメスとして俺を楽しませてくれるだろう。
だが、神崎春香としての面は失われる気がしていた。