初恋の人は 23
ただ悪ふざけする子には厳しく、俺のように体罰に至るケースは三件程・・・
それら全ては生徒側が圧倒的に悪く、真面目な生徒からは神崎先生を怒らせる方が悪いと言う評価だったらしい。
俺も悪ふざけが過ぎて怒られた訳だが、後で親からもその事は怒られている。
他の二件も勿論、生徒が悪いのだが・・・
その一件が問題だった。
俺が悪ふざけで怒られた時、もう1人怒られた奴がいた。
奴はPTA会長の息子であり、俺のある種の喧嘩仲間みたいなものだった。
俺が脳震盪起こした時も奴も叩かれた筈だが怪我すらしていなかった。
だが、俺が検査入院やらをしてる数日で彼女は学校からいなくなっていた。
実はそのPTA会長の親父とやらが曲者で、息子の事を謝罪したいと言って先生を呼び出し、クスリを飲まして眠らせた上でレイプしたらしい。
そしてそのネタを先生の婚約者に流して婚約破棄させたらしいのだが、その婚約者と言うのが政治家一族で、何故かPTA会長にお咎めは無く彼女だけが悪い事にされたらしい。
「ああ、そのおじさま知ってるわ・・・私の処女買った人ね」
「マジか・・・嫌なオッさんと言う印象あったし、うちの親父が好んでいなかったけどな」
きららから意外な話が出る。
言わばその親父は、喜多岡由衣を結川きららにするきっかけを作った張本人と言う事らしい。
「もしかして、おじさまの紹介でAVに?」
「しばらくそこで調教されてからこの業界に来たの・・・」
きららは納得したような顔をしていた。
「まっ、私はある意味縁が切れたからAVに来たんだけど、おじさまの所にいたならこうなるわね・・・」
「私も縁が切れたと言うか、捨てられたんだけど・・・」
きららに対して神崎先生・・・
いや、高浜アンナの顔は暗い。
暗いのだが、最初の時に比べるとリラックスしている感じだ。
ただ話を聞く限り、PTA会長に厳しい指導で全ての生徒や保護者から恨まれていると刷り込まれて調教されたようだ。
実際、何人かの保護者に復讐レイプまがいの事をやらせたらしい。
それ故に今のAVでそんなキャラを生かしているわけだが、あまりにも悲壮感が漂っていて、作品を見ていてこれで抜いていいのか、と申し訳なく思ったのも事実だ。
「嵯峨くんがあの人に私に厳しいという印象を刷り込まれてると思ってずっと心配でならなかったわ…」
「俺は、全然そんなことは…」
AV女優は結構悲惨な境遇の子が多くて、そんなバックボーンを知ってしまうと抜けないと言うのがある。
神崎先生の場合も、色々わだかまりはあったけど、こうやって聞くと抜き辛い話だった。
「あの人に初めても・・・結婚するまで清い身体でいようと思ってたけど・・・もうそんな事も望めない・・・」
「分かるわ、アンナさん・・・もう、私達は望んだらいけない事だものね」
きららの方はくしくも同じ男に処女を奪われた同士と言う事もあって共感して涙ぐんでる。
確かに結川きららと言う人気AV女優でも、普通の結婚は望むべくも無いのは理解してる。
例え俺が彼女と結婚を望んだとしても、途方も無く分厚い現実に向き合わなくてはならない。
それを2人で乗り越えるのは不可能に近いし、産まれてくる子供にすら犠牲を強いる事もあり得る。
これが腐る程金がある境遇なら可能だろうが、そこまで裕福ではない。
しかも、最近は自分だけの正義感を振りかざして、彼女達のプライベートな部分を暴こうとするネット層がいるので余計だ。
つまり、結川きららですら普通にはなれないのに、更に下層の神崎先生が普通になれる事はありえないと言える。
例えそれを隠して生きても、誰に迷惑をかけなくても正義感でバラす奴なんてどこにでも居るからだ。
不憫だけど、俺にどうこうしてやれる事なんて無い訳だ。
「ねぇ、コーくん・・・」
きららが俺にそう切り出してくる。
言いたい事は分かる。
「彼女を抱けと?」
「うん、私達にとっては望んでできるセックスは癒しだから」
仕事でセックスしている彼女達からしたら、自分でしたくてするセックスはきっとそうなんだろう。
俺みたいな男として未熟なのと喜んでセックスするのもそうなのかもしれない。
「私・・・きららさんみたいにいいものじゃないけど・・・」
「まぁ、でもMカップは実物を拝んでみたいな」
俺の言葉で彼女の表情は綻ぶ。
確かに彼女がきららに勝てる要素は、このMカップしかない。
「私、望んで男の人に抱かれた事が無いから、上手くできるかどうか分からないけど・・・」
少し迷いながらも、服を脱いでいく。