女子学園の調教師 9
原野先生の無言の手招きで裕太は地下室の中へと連れられて入る。裕太が地下室に入ると、原野先生は地下室の扉を閉めた。
「実はね…昨日、貴方が生徒と一緒に空き教室に入った後、私も入ろうとしたら。教室が開かなったのよ。鍵がない部屋が何故、開かなかったのか知りたくて…貴方をここに連れて来たのよ。正直に話して…昨日生徒と何があったの?」
「そ…それは、つまり…」
裕太は本当の事を打ち明け無ければ、ここから出られないと思い…。少し口を閉ざし思いって口を開こうとした瞬間だった。
「先生!」
地下室の扉が開き結菜が入って来た。
「赤嶺さん、何でここに?」
「すみません、先生達が何処か行くのが見えたので追ってきました。それに原野先生、失礼ですが…私達は先生が疑う様な忌まわしい行為は何もしていません。もし…そんな行為があれば、真っ先に私が他の人に言います!」
真っ直ぐな視線を向けられて原野もフッと微笑んみながら軽く首を振りながら、軽く髪を撫でる。
「全く…貴女達って、本当に彼が好きなのね…まあ、今回は大目に見るわ」
そう言いながら原野は地下室の扉を開ける。
「話しは以上よ。授業が始まるから、職員室に戻りましょう」
「あ…はい」
裕太は地下室を出る時に結菜の顔を見ながら「ありがとう」と、声を掛ける。
彼女は微笑みながら
「気にしないで」
その時、結菜は無意識に裕太の手を握り…
「今度は貴方と…」
と、軽く呟く。
「え…?」裕太は呆気に取られながら振り返る。
一瞬記憶が蘇った彼女だったが、直ぐに元に戻って自分でも、何を口ずさんだのか覚えて無く。
「アレ、私…今何か変なこと言った?」
と、頬を赤くしながら走って教室に戻ってしまった。
〜5年1組
朝の朝礼が始まる前の教室は賑やかだった。皆…昨日のテレビの内容やスマホのチャットをしている子等…。色んな事で時間を潰していた。
そんな中、朝礼時間が始まりそうになって教室に入って来た少女がいた。彼女を見て、他の子よりも少し小柄の子が近付く。
「ねえねえ…綾乃ちゃん、今日さお兄ちゃんと個別指導だけど…どんな感じか分かる?」
家瀬陽葵(いえせひまり)と言う名の少女が、藁井綾乃(わらいあやの)と言う少女に話し掛ける。陽葵の言う『お兄ちゃん』とは、杉本先生の事だった。彼女は裕太を『お兄ちゃん』と呼んでいた。
綾乃は机の上にランドセルを置いて、その上に顔を乗せる。
「ふあ…後で見るわ」
「ダメよ、今すぐ私を占ってよ」
「分かったわ…掌を見せて」
そう言われて陽葵は綾乃に掌を見せる。彼女はジッと見つめると陽葵に向かって言う。
「悪くは無いわね。ただ…先生の行動が少し気になるわね」
「そう…ありがとう」
そう言って陽葵が綾乃を見ると、彼女はウトウト…と眠り掛けていた。
それを見ていた他の女子児童達が小声で話す。
「あの子…また朝から寝ているわね」
「本当…一日のうち半分くらい寝ているでしょう」
「でも、あんな子でもテストが常に高得点取るって不思議よね…」
「天才と凡人の違いなのかしら…?」
そう話していると、葵と言う少女が会話の中に入って来た。
「高度な霊能を持つ子って、その分…体力の消耗も多いのよ」
「そ…そうなの?」
「ウチも霊的な修行しているけど…先天的な彼女は、ウチの倍以上の能力があるらしいわよ」
「へえ…そうなんだ」
「それにね、あの子…既に気付いているらしいわよ」
「え…何に気付いているの?」
「学園に怪しげな者が入って来ている事に…」
それを聞いた女子児童達は、唖然とした表情で葵を見た。
その時、ガラッ…と、教室の扉が開く音がして、先生が入って来るのを見て、生徒達は皆一斉に自分の机に戻る。
「起立ー、礼」
全員が一斉に礼した時だった。
「ちょっと、待って」
杉本は、皆を呼び止めて、一番後ろの席に向かう。
綾乃が鞄を枕にして夢の中だった…。それを見た杉本は彼女を呼び起こす。
「起きなさい」
「ふあ…」
呼び起こされた綾乃は、フラ付きながら立った。
「礼ー」
と、号令が掛かり。「着席」と、言われて皆、椅子に座ると…
綾乃は…今度は立ったたままの状態で眠っていた。
「綾乃ちゃん!」
杉本に声を掛けられて、彼女は椅子に座る。
全員が席に着いたのを見て杉本は、皆に向かって話を始める。
「え…と、昨日個人指導をした事での件ですが…」
彼は何者かに体を憑依された事に気付き、個人指導を廃止しようと考えた。
それを言おうとした直後だった。杉本は一瞬立ち眩みを感じて、目の前の景色がぼやけた。
すると…杉本の表情が一変した。
「個人指導は続けます、今日は家瀬陽葵ちゃんですね」
そう言われて陽葵は「はーい!」と、元気良く手を挙げた。
彼女を見た杉本は、ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
(あ…あれ?)
裕太は、一瞬の出来事に少し戸惑った。自分は個別指導の中止を呼びかけようとしたが…口から出た言葉は別のものだった。それ以前に、一瞬自分が別の誰かに変わった様な感じがした。
「え…と、個別指導は…」
その続きを言おうとするが…言葉が口から上手く発せられなかった。
「大丈夫よ先生、分かってますから」
陽葵や他の生徒達も笑いながら言う。
「そ…そうだね、じゃあ…今日の1限目は体育です、皆…着替えて運動場に来るように」
そう言って裕太は少し考え込みながら教壇に立っていた。
「あ…あのう、先生…」
前の席の子が声を潜めて言う。