幻影 51
「もうそんなこと言ってぇ、結衣ちゃんが怯えてるじゃない…」
いえ、結衣はむしろもっと話を聞きたくてワクワクしてますけど。
「お二人はよい仲なんですねぇ」
「まあ付き合い長いからな」
「豊くんはお世話してあげないと枯れちゃうからね」
「おいおい、人を植物みたいに言うなよ…」
「あらぁその植物を甦らせてくれたのは結衣ちゃんなんでしょ?…」
おっと;…瑞希は僕が勃たなかった時のことを言っているんだな;…
「あっ、いや;…あの時のことは瑞希には申し訳なかったと思っているさ;…」
もう何度も謝ってはいるけど、女性の立場を考えると何度謝っても足りるもんでも無いだろうしな;…
「いいのよ、あの時は私だって間違ってたんだから」
瑞希は表情変えず努めて明るく言う。
コイツだってその時は女の子らしく可愛いんだ。
先代の結衣を失う前、酔った勢いでお互いやってしまった時のことは…まだ忘れない、むしろそっちを忘れたくない。
「この後は、結衣ちゃんとお楽しみでしょ?」
「まあそんなことも無いけど…」
夕方から結衣は塾だって言ってたしな…
「そんな隠さなくてもいいのよ…帰る前に梨花さんに紹介させてぇ」
「別にいいけど…彼氏でも無いのに紹介なんて必要あんの?」
「それが梨花さん…私たちと同じ大学に通っている男の子と知り合いらしいのよ…」
「へぇ、そうなの?」
「うん、今度二年生になるらしいの。その男の子の彼女も同じ大学で、梨花さんの妹さんなんだって」
「偶然とはいえすごいな」
「ふふーん、瑞希ちゃんの知り合いかぁー」
「咲乃さん、あっ、仕事中にごめんなさい」
「いいのよいいのよ、もう繁忙期は過ぎたからね〜」