幻影 49
「いやぁ…結衣がそんなに美味しそうに食べてるのが、可愛いもんdから、つい」
「ふふっ、豊さんは冗談がお上手で」
…いやいや、もうド下手というかなんというか、完全に苦し紛れだ。
休日、結衣とデート。
学生同士、安上がりのプランでも喜んでくれるのは嬉しい。
「豊さんがこんないいお店知ってるなんて思いませんでした」
「数少ない女友達のおすすめでね」
そこは瑞希のバイト先…
瑞希がバイトに入っている時なら、かなりサービスもして貰えるんだな…
「その女友達って、あそこの綺麗な人でしょ?…」
結衣はレジに立つ瑞希を見つめる…
「ああ…大学の同級生…、前に話した亡くなった結衣の…親友だったんだよね…」
ホントなら瑞希のシフト外の時間に行きたかったけど、今日は急な事情でもあったのだろうか。
それにしても結衣も瑞希の存在を意識しだすとは、先代の結衣の存在を意識せずにはいられない。
「私も大盛り頼んだわけじゃないのに、ちょっと多めですね〜」
「ああ瑞希のお陰だよ…」
満と来た時はこの倍は盛ってくれたもんね…
「それじゃあ後でお礼を言わなきゃ…」
「うん、店の混雑がおさまったら、ちゃんと紹介するつもりだよ…」
「ぅわ、なんだか緊張しちゃうなぁ…」
「大丈夫だよ…瑞希は面倒見のいい姉御肌な奴だからね…」
「豊さんは私なんかより、引っ張ってくれる女の人が似合うっていつも思っちゃうんです」
「そんなことはないさ」
先代の結衣だって主張しない子で、お互いに意思を尊重しあってきたんだから。
僕も食事している間に客の数は疎らになっていく。
1.5倍くらいの量を完食した頃にはほぼ空席といった感じだ。