幻影 30
もうあんな思いはしたくはない…
そう思うと自然と抱き締める力が強くなる…
「豊さん…私はどこにも行きませんから…」
「ああ、それは分かっているんだ…だけど絶対なんてことがあり得無いことを…僕は知ってしまったからね…」
「豊さんそんな寂しいことを言わないでください…私はどんなことがあっても“絶対”ですから…」
「ありがとうな、結衣…」
その言葉が何より嬉しかった。
涙を見せまいと結衣に深く、熱いキスをして、その愛を確かめた。
先代の結衣とは出来なかったいろいろなことがしたい、そう思った僕はそのしたいことを考え、今の結衣に提案してみた。
「ちょっと恥ずかしいですけど、豊さんなら…」
僕の目の前にはメイド服姿の結衣がいる。
モチロンそれは僕の隠された趣味で、先代の結衣に着てもらおうと購入しておきながらそれも叶わなず、ずっと隠しておいたメイド服だ…
「豊さんがこういうのが好きだとは全然知らなかったは…」
それはそうだろう;
ちょっと人には言えない趣向だから、ひた隠しにしてきたからね;
「以前の私…じゃないや、結衣さんにも着せてたんですか?」
「ううん…なかなか言い出せなくてね…」
「ふふっ、でも、コレはコレで、女の子らしくてフリフリしてるの、可愛くて好きですね」
結衣は紅茶を入れて持ってきてくれた。
「ご主人様、どうぞ」
「ありがとう」
ちょっと照れる…
これじゃホント、メイド喫茶だ…
「クス、こういうお店よく行くんですか?…」
「あっ;…そんなことも無いさ…前にちょっと付き合いで行っただけだよ…」
嘘だった;…
前の結衣と付き合っていた時には、内緒でよく足を運んでいたものだった…