幻影 13
「ぜんぜぇ〜ん!私も今着いたばっかり〜!!」
人波かき分けるように結衣も僕に向かって駆け寄ってきて、勢いよく抱き着く。
おっと、危うく飛ばされそうだった。結構パワーあるかも。
でも、結衣の見た目よりグラマーな身体を楽しめるのは幸せだ…と思いながら抱きしめ返す。
「うふふ、ずっと楽しみだった」
「何が?」
「豊さんに会えるの」
頬が自然と緩む…
全く…嬉しいことを言ってくれるよな;…
「そんなこと言われたら、結衣を一生離さないぞ;…」
もう二度とあんな思いはしたくないからな…
「もちろんですよぉ…私だって豊さんとは一生離れませんから…」
結衣は微笑んで僕の腕に自分の腕を絡めてくる。
その際に豊かすぎる胸が腕に当たり、ちょっとだけドキッとする。
でも、その感触も人肌も暖かくて、今はすごく嬉しい。
「どこに行きます?」
「特に決まってないけど…お腹空いてない?」
「大丈夫です!」
そのまま繁華街をウインドーショッピングして回る。
何気ない時間が、すごく楽しく感じる。
こないだこうするつもりがそうもいかなかったからな…
今日はこういう普通のデートを、ちゃんと楽しまなきゃいけないよな…
「男の人はショッピングなんかじゃ詰まらなくありません?…映画でも観ましょうか?…」
「いいけど、最近の作品よく知らないから…」
「私、ずっと見たかったのがあるんで、良かったら一緒に」
「うん」
結衣に腕を引っ張られるように歩く。
映画とか音楽とかにはあまり興味がなく、「先代」の結衣の時も同じで、彼女のおすすめの映画やアーティストのライブを一緒に見に行ったりしていた。