(続)格好が・・・ 53
「コーくんも受けてみたらどう?」
「考えてみるよ」
「ここって確か、一宮グループの関連ですよね」
受付担当に尋ねる卓也。
「ええ。そうですけど」
『一宮ビューティー』は一宮グループの系列会社で、国内にエステティックサロンを百店舗以上展開し、海外にも進出している。今、瑞穂や麗美たちが来ているのはその『一宮ビューティー』の店舗の1つだ。
「野上さん、どうぞ」
店長の英里子が姿を見せ、順番で瑠璃を呼んだ。
「それじゃ、お先に失礼します」
瑠璃は椅子から立ち上がった。
「タッくんじゃない!」
英里子が卓也の姿を見て声を掛けた。
「あっ!英里子さん」
「懐かしいわね」
英里子はかつて、ホワイトスパークの合宿所に出向し、そこのエステルームにおいてメンバー達の肌の手入れや脱毛処理を請け負っていた。卓也もホワイトスパーク時代、英里子の施術を受けていた。
また、メンバーたちは卒業後、オーナー一宮聖羅の指示により、中学在学中に美容整形クリニックに通い、首から下の永久脱毛を果たしていた。
受付担当は急に気を付けの姿勢になり上半身を90度近く下げた。
「申し訳ありません!ホワイトスパーク卒業の方だったのですね!気づかず、失礼なことを申し上げて、失礼しました!」
「まあまあ、気にしてないですから」
「卓也くん。また私に磨いて欲しくなったかしら?」
英里子は笑顔で卓也に聞いた。
「いえ。英里子さんにはもう十分過ぎるくらい磨いてもらいました。今日は彼女の付き添いなんです」
「卓也くんの彼女って、そこのホワスパルックのお嬢さんかしら?」
英里子は卓也の傍に立っている瑞穂を見つめる。
「珠木瑞穂です。よろしくお願いします」
英里子に向かってペコリと挨拶する瑞穂。この時、瑞穂は、ネット通販で購入したホワスパシャツに白いホットパンツ、白いハイソックスといった、通称ホワスパルックのスタイルだった。
(ホワスパシャツ、ホワスパルックについては『ホワイトスパーク』を参照)
「もう卓也くんの肌は見たかな?」
瑞穂は一瞬何と応えたらいいか迷ったが、ありのままを応えることにした。
「水着姿は、見ました。確かに、すねとかすごいきれいで…それは、ええと、麻生店長のおかげだったのですね」
瑞穂は英里子のネームプレートを読んでそう言った。
瑞穂は半月前からこのサロンに通っていた。このサロンには他にもエステシャンはいたが、瑞穂の施術は当初から英里子が担当していた。
「卓也くんの恋人の施術を私が担当するなんて。これも何かの縁ね!」
やがて、瑞穂の順番が回ってきた。そして、瑞穂はこの日も英里子の施術を受けた。
「タク坊をあんなにピカピカに磨いた…同じ人に…そんな凄い人に私も身体を磨いてもらえるなんてラッキーだわ!」
英里子直々の施術を受けられたことに瑞穂は感激だった。
「よかったな、瑞穂姉ちゃん!英里子さんにやってもらえて…」
卓也も大いに喜んだ。
「瑞穂さんって、とても素敵な人ね。私の息子の絵のモデルになってみない?」
英里子は瑞穂を見つめながら言った。