そして、少女は復讐する 76
その亜美が車の後部座席を開けようとすると、それを制して敦が開け、一希を誘う。
一希も笑みを浮かべながら敦のエスコートを受け車に乗り込む。
成り上がりと揶揄されるが、れっきとした名門家庭の生まれ。
この辺りの所作は洗練されている上に嫌みが無い。
個人的な思いを別にして、一希が断ったのが勿体なかったぐらい敦もできた男なのだ。
一希に続いて敦も後部座席に乗り込み、亜美は助手席へ。
運転するのは制服に身を包んだ女性。
勿論タクシードライバーではなく敦の専属運転手。
彼女の名は飯島陽子。
本名は飯島陽次郎・・・
つまりシーメールである。
改造済み、未改造含めて敦の周りにシーメールや男の娘が多い。
いや、むしろ女は亜美や千恵子等殆どいないと言った方がいい。
一希と同じバイセクシャルであっても嗜好が違って、敦は女装男子や女体化男子が好きなのだ。
普通の男には興味ないからこそ鉄也や健二と付き合えてる訳である。
そして彼らは敦に対する忠誠心は非常に高い。
信頼できる存在だからこそ、敦はリラックスした表情で背中をシートに預け、一希の肩を抱く。
一希もそれに合わせるようにその身を敦に預ける。
どこから見ても恋人同士のような2人。
しかも似合いのカップルだ。
「今日は鉄也に抱かれて来たんだろ?」
「ええ、最後は凄く可愛がってくれました」
普通の恋人同士では考えられない会話。
敦の表情に嫉妬らしきのは無く、むしろ嬉しそうですらあった。
「鉄也ってな・・・」
窓の外に視線を走らせながら敦が語りだす。
「鉄也ってな、一希と俺が結婚することは分かってた・・・いや、むしろ俺達を引っ付かせようとしてたんだ・・・」
意外な言葉に一希は目を丸くする。
「だから持てる全てを出して一希を抱いて変えようとしたんじゃないかな・・・あいつ、セックス以外で女と関わる方法知らないしな・・・」
話してる敦の表情は楽しそうであった。
一希はその横顔を見ながら、2人が本当に親友なのだと今更に思うのだった。
「それで、私が本気で鉄也さんを愛するようになったのも構わないのです?」
「構わないよ、多分鉄也に抱かれた女はみんな鉄也が好きになるんじゃないかな?・・・それに鉄也も一希が好きだったんだと思うぜ」
敦の言葉に逆に一希が嫉妬めいた感情を抱いてしまった。
この2人の友情の強さはどうやっても切れない強固さなのだろう。
ここに自分が入り込む余地が無いように思えたから嫉妬めいた気持ちになったのだろう。
「妬けますわ・・・男の友情って・・・」
「妬かれても困る腐れ縁さ」
ちょっと拗ねた表情の一希に困った顔の敦。
しかし2人はすぐにお互いの顔を見て笑い合う。
鉄也に抱かれていた時、朦朧とした意識の中で見た鉄也の目に光るもの・・・
あれがもし涙とするなら、あれは娘を送り出す父親の涙に近いものだったのかもしれない。
そして自分が最も信頼する親友だから愛する女を託せたのだろう・・・
鉄也も敦も・・・
一希は更に敦に身を寄せ、上目使いで口を少し開く。
おねだりするような表情だ。
「こまりましたわ・・・こんないい男だったら、貞淑な妻にならないといけませんわ」
「俺としてはエッチでビッチな妻がいいんだけどね」
そう言い合いながら重なる唇。
一希はうっとりと敦を受け入れていた。
美男美女の敦の一希。
そのキスはドラマのワンシーンのようであった。
それがだんだんと洋楽のような互いの唇を貪るような深いものに変わり・・・
そして、一希は口を開けると舌を伸ばす。
それに応えるかのように敦が口を開くと、一希の舌は敦の口に入り込む。
そしてピチャピチャと卑猥な音をわざと鳴らしながら、敦と一希は舌を絡め合った。
それは名家のお嬢様の姿ではない。
娼婦もしくはAV女優のようだ。
卑猥なキスをしながら一希は股を大きく開き、敦の手をドレスの中に導く。
「ふふ、穿いてないんだね」
「ええ、敦さんこう言うの好きでしょ?」
ねっとりと敦の指に絡み付く湿り気。
一希のそこは既に潤っていた。
そして一希は敦にそこを弄らせつつ、敦のズボンを開放し堂々とした男根を露にさせた。
一希から清楚なお嬢様の表情が消え去り、セックスを心待ちにするビッチの貌が浮かぶ。
その表情のままドレスたくし上げると、敦に跨がり腰を下ろす。
「んあぁ、オチ○ポいいぃ・・・」
敦に背中預け、今度は胸元を引き下ろして大振りの胸を露にさせる。
スモークガラスとは言え、ここは車中なのにだ。
快楽の悦びに浸る一希を見ながら、敦は満足そうに笑う。
変態的なビッチに仕上がった彼女は、彼にとって理想的な女だった。
親友である鉄也に散々犯され、心まで虜にされた事すら彼には小さな事にしか過ぎない。
故に敦は満足げに一希を突き上げたのだ。
行為が一旦終わった所で、亜美が敦に話しかける。
「慧より報告が届いています」
「ああ、読んでくれ」
繋がったまま敦がそう言うと、一希も状況を察して表情を変えた。
「やはり『ピンクショック』が使われているそうです」
「ああ、やっぱりな」
亜美の言う『ピンクショック』とは、通称『PS錠』と呼ばれる危険ドラッグの一種である。
ドラッグの中では刺激、興奮効果が小さく中毒性も低いと言われるが、これの最大効果は服用してのセックス。
それに関してだけ処女すら淫売に変える程の効果があり、キメセクした女はセックスとドラッグに強い中毒症状を持つようになる。
そして最終的には記憶障害や精神崩壊を起こす事もあり、その被害者の一人が健二の姉であった。