そして、少女は復讐する 6
その一発うんぬん話の後日から、童貞仲間達の付き合いが悪くなり、そして謎の落雷事故である。
ゲーマーの藤沢はエロゲのコレクションを処分、ミリタリーマニアの本町が二等兵口調から軍曹口調に昇格した。
病弱で人見知りな善行が、耳をこらさなくても聞こえる声で話す様になった。
特に比較的インテリの江島は『これからは派閥』と謎の言葉を残していた。
良く言えばピュアで悪く言えば鈍感な悠馬にも、これまでの高校生活で疑う事を知らなかった彼も漸く、このクラスは何かおかしいと理解出来た。
だが彼はまだ、クラスの誰もが知るレイプ騒動やいじめの事実にすら辿りつけず、疑問のループを繰り返すだけだった。
教室の窓際最後尾の特等席、アンニュイな雰囲気の小柄な女子生徒が机の下で手早くメールを打っていた。
>美咲のバカが目立ちすぎ、釘刺しといた方がいいかも。
>由佳里も何だか様子がおかしい、ちょっと計画立て直そう。
>最悪の場合、美咲は見捨てる方向でいいよね?
そして一斉送信、生徒誰一人として『あいつら』の全体像には気付いていなかった。
由佳里は『あいつら』が美咲一人どうこうではどうにもならないと知りながら、穏やかな怒りの矛先は彼女に向けたまま。
幾らかいじめ事情を知る生徒は美咲に適当な相鎚を打つか半笑いで我関せず、悠馬に至っては全くの問題外であった。
…その後は平穏に時間が流れ、昼休み。
「(…ここまで何もないのはちょっと不思議かも)」
由佳里は一人こっそりと屋上へ。
美咲一派の存在があっては教室での昼食は危険。
そう思っていたうちに恒例になったのが、優雅かつ哀愁漂う屋上ぼっち飯である。
弁当は母の手作り。
多少食が進まなくても完食しないと申し訳ない。
由佳里はつかの間のゆったりとした時間を過ごしていた。
そんなささやかな一時も、屋上の鉄扉を蹴り開ける音に阻害される。
現われたのは、髪を染めたいかにもヤンキーと言った感じの男子。
桐間鉄也。
他所のクラスだが噂には聞いていた。
勿論、それは悪い噂ばかりだったが・・・
鉄也は由佳里を見ると、猛禽のような笑みを浮かべて近づいてくる。
どこをどう見ても好感度が上がるような男では無い。
「おい、ヤリマン」
ぴくりと由佳里の眉が動くが、この程度の罵声は慣れっこだ。
鉄也は由佳里に近づくとしゃがみ、顔を覗き込むように伺う。
「一発ヤラせろや」
実に単純明快。
この年齢の本能のままに動くヤンキーらしい言動。
コイツには性と暴力以外の行動理由なんてない気が由佳里にはしてた。
由佳里はいつもの能面のような無表情で言う。
「一発ヤレば満足?・・・ならさっさとして・・・1人の貴重な時間が無駄になるから・・・」
何でこんな言葉が出たのか自分でも分からない。
多分、この男は『あいつら』にそそのかされて来たのだろう。
どうせ切り捨てられる駒に過ぎない。
鉄也は由佳里の言葉を鼻で笑う。
「なんだ、童貞チ○ポしか咥えてねぇからヤリ方も知らねぇのか」
『あいつら』に唆されたのと思いきや、ちょっと感覚が違う。
何と言うかこの男、興味本位で来てる気がする。
「男なんて・・・」
由佳里の能面が少し歪む。
「男なんて、ただハメればいいだけでしょ!」
由佳里の言葉にまた鉄也が鼻で笑う。
「違うな」
そして由佳里を強引に引き寄せ、胸を掴み首筋に舌を這わす。
「オンナをコマしてこそのファックだぜ」
胸の微妙なタッチと舌の動き。
軽い刺激だが、思ったよりも感じてしまった。
それを確認した鉄也は、もう片方の手をスカートの中に滑り込ませた。
「ん、あ・・・」
淡い快楽の波。
男に愛撫されるのはこれが初めて・・・
今までのレイプでは快楽とか絶頂とか味わう事の無かった由佳里が、この男の手で快楽を感じていた。
「いい感度じゃねぇか」
鉄也がニヤニヤと笑う。
この男が現れてレイプぐらいは覚悟したが、まさか気持ちよくされるとは思ってもみなかった。
かなり混乱した由佳里の能面が戸惑いで崩れていく。