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ノーマンズランド開拓記
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ノーマンズランド開拓記 9

「つまり若はこう仰りたい訳ですな…我々は上陸して二日目に、彼女達から“敵”と認識される何らかの行動を取ってしまった…と…」
「その通りだ、クラウス」
「じゃあその“行動”ってのは一体何なんです!!?」
「それが判れば苦労は無いよ…ハーヴィン教授が彼女達の言語を解明してくれるまで待つしか無い。今の状態では弁解も謝罪もしようが無いからね。言葉が通じるようになれば誤解もとけるだろう。それまでは彼女達との接触は可能な限り避ける…良いね?」
「…解りましたよ」
渋々といった様子で頷くベイウッド。
ルークは更に付け加えた。
「それから今後、彼女達を“蛮族”と呼ぶのも無しにしよう。さっきも言ったが、彼女達は野蛮ではない」
「では何と呼べば良いですかね?」
ジェシカが尋ねる。
ルークは少し考えて、そして答えた。
「うーん…“先住民”だな。彼女達は僕達より先にこのアルディア大陸で暮らしていた。その事に敬意を表してそう呼びたい」

後に学術便宜上“アルディア先住民”と呼ばれるようになり、その呼称は一般にも広まるのだが、それはずっと先の話……。

「それから彼女達が襲って来た理由についてだが、知らない内に敵対的行動を取ってしまったという仮説の他に、もう一つ……可能性は低いが考慮すべき仮説がある」
「何です?」
「彼女達は僕達を見ただけで敵と判断した……より正確に言えば、過去に僕達と似た姿形の人間達と敵対関係にあった……という仮説だよ」
「まさか……!」
「そうだ、僕達よりも先にこの大陸に辿り着いていた者達がいたとしたら……彼らが必ずしも先住民達と良い関係にあったとは限らない」
「では彼女達は……」
「ああ、エルシオン大陸の人間に恨みがあるのかも……あくまで僕の推測に過ぎないけどね」

ルークの仮説を聞いたジェシカは、石のナイフを手に取って眺めながら言う。
「いずれにせよ、ここには私達の知らないここの事情がある・・・それを理解するまでは彼女達とは距離を置いた方が良さそうですね。もちろん襲撃なんてもってのほかです」
ジェシカは剣術や銃撃にも秀でているが、最大の武器はその『知力』だ。
ルークのみならず義父となったクラウスも彼女の知能を信頼していたし、他の者達も一目おいていた。
その彼女の意見は大きく、ベイウッドも不満そうながら黙ってジェシカを見る。
「戦略的に見ても、私達は相手の戦力の全貌を把握していません。こちらの純粋な兵力と言えば50名たらず。船の大砲の届く距離は彼女達が現れた森の入口までが限界。何より私達はこの土地に不慣れです。いま戦えば勝てても犠牲は大きいかと・・・」
的確な意見だ。
巨漢のイワノフもジェシカに賛同する。
「私も同じ意見です。まずは砦の建設を急ぎ、大砲を陸揚げすべきかと」
巨体で怪力自慢の彼だが、頭も回る。
ルークは言葉を選びながらも自分の思いを語った。
「二人の意見はもっともだ。現段階での最優先事項は拠点の確立だ。いつまでも入植者達を船上なんかで寝起きさせていたら、彼らの心は故郷に帰ってしまう」
そして表情を和らげ、ベイウッドを見て言う。
「そういう訳だベイウッド、今は耐えてくれ。仲間を殺されて悔しい気持ちは僕も皆も同じだ。でも憎しみに駆られて冷静さを欠いた判断だけはしないでくれ。僕には・・・開拓団には君の力が必要だからね」
ルークの柔らかい言葉にベイウッドもため息混じりに肩をすくめた。
「分かりました・・・まずは砦を強固にしましょう」
彼の言葉にクラウスも微笑む。
いい状況だ。
ルークは若いながらもリーダーとして急速に成長している。
周りに助けられながらも、この場を上手く収めたのは成長の証だろう。

こうして彼らの方針は決まり、翌日から砦の建設が再開された。

・・・それから1週間。
砦は急ピッチで建設されていた。
大砲も陸揚げされ、城壁や櫓(やぐら)なども出来た。

一方、捕虜の女達とエリスはと言うと・・・
「いやあ、君が来てくれると助かるよ・・・私では役不足だからね」
今日も女達に会いに来たエリスをにこやかに迎えるハーヴィン教授。
「悪気は無いんでしょうけどね・・・」
エリスは苦笑しながら服を脱ぐと牢に近づく。
そんなエリスを笑って見ながらハーヴィンは牢から離れて小屋へと向かう。
彼女の休息の時間だ。
エリスは三人の食事を運ぶだけでなく、このように交代要員も兼ねているのである。

ハーヴィンが場を離れる理由は、エリスが女達と接するのを恥ずかしがるからでもある。
その理由とは・・・

彼女が牢に近づくと、それまで壁際で大きな身体を丸めて寄せ合っていた二人の女達が柵の手前までやってくる。
何やら言葉を発し、既に敵対心も無い。
喜んでいるのか、高揚して奇声に近い声を上げることもあるが、それは笑い声なのかもしれない。
「エリィス・・・エリィス・・・」
エリスの名前を呼ぶ。
「ハロハ、ウザラ、元気だった?」
言葉はまだ殆ど通じないが、エリスは彼女達と名前だけは教え合えた。

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