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ノーマンズランド開拓記
官能リレー小説 - その他

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ノーマンズランド開拓記 5

彼らはただ安心したかったのである。
“大丈夫だよ”、“何も心配しなくて良いんだよ”…ただその言葉さえ聞ければ良かったのである。
だがルークの(真実であるがゆえに)曖昧な答えに、不安感は逆に増大し、いら立ち始めた。
そして当然その怒りの矛先はルークへと向けられるのである。
「じゃあ何ですか!?あなたは人間が住めるかどうかも判らない土地へ私達を連れて来たと言うんですか!?」
「そうだそうだ!」
「我々を騙したのか!?」
…一応言っておくが彼らは皆“自ら志願”して開拓団に参加したのだ。
ルークに対して怒りをぶつけるのはお門違いも良い所である。
だが、そんな理屈は怒り狂った群集には通用しない。
ルークはよせば良いのに、なおも皆に向かって訴えかけた。
「みんな!聞いてくれ!僕はみんなを騙したつもりなんて無いし、このアルディア大陸に人間が住めないなんて思ってもいない!今はまだ何もかも始まったばかりだ!これからなんだ!これからどうやってこの土地で生きていくか、それをみんなと一緒に考えて行きたいと思って…!」
「ふざけるな!!」
「もう騙されないわよ!!」
「そうだ!!どうやってこの事態の責任を取るつもりだ!?」
皆、集団心理もあって強気になっている。
今にもルークに襲い掛かってリンチにしそうな勢いだ。
その時だった!

ズダァー―――ンッ!!!!

突如として一発の銃声が辺りに響き渡った。
皆はハッとして銃声のした方に目をやる。
煙の立ち上る銃口を空に向けたクラウスが立っていた。
「…どうだ?少しは落ち着いたかね?」
黙りこくる皆に対してクラウスは語り始めた。
「皆の不安な気持ちは私も…そしてもちろんルーク様も良〜く解っておられる。初日からこんな悲劇が起こったのだからな…無理も無い。だが安心しなさい。我々の入植に先立ち、我がアスファルティア王国海軍の調査隊がアルディア大陸の調査を行い、入植可能との判断を下している」
「そ…そんなもの、信用できるか…!」
一人が声を上げた。
だがその声には先ほどまでの殺気立った雰囲気は無い。
クラウスは逆に尋ねた。
「ほう…君は海軍の報告が信用できないと言うのかね?」
「そ…それは…」
男は言いよどんだ。
クラウスは続ける。
「…仮にこのアルディア大陸が人間の生存が不可能な土地だとして、そんな所に自国の民を送り込むような非道を国王陛下がなさると思うか?しかも自らの甥であるルーク様をその代表に添えて…」
「「「……」」」
群集からはもう何の声も上がらない。
アスファルティア王室は国民達からは概ね愛され親しまれていた。
クラウスは国王の名を持ち出す事によって人々を納得させ、ついでにルークが国王の血縁という高貴な人物である事も思い出させたのである。
彼は更に続けた。
「心配は無用だ。この開拓事業は必ず上手くいく。さっそく明日から居留地の設営に取り掛かろう。これから後続の移民船団がどんどん来るからな。人も増え、ここもいずれは本国の王都にも引けを取らない大都市となるだろう。そうなる頃には君達は大農場主だ。良いかね?君達は必ず幸せになれる。そのためにも今はつまらない心配などせず、家族の元に戻ってゆっくりと体を休めておきなさい」

クラウスの言葉に諭され、群集はすごすごと(いや、期待に胸を膨らませて)戻って行った。
ルークはホッと一息つきながらクラウスに感謝する。
「ありがとう、クラウス…助かったよ」
「いやいや、私も冷や汗が出ましたよ。しかし若の身に何も無くて本当に良かった」
「しかし知らなかったなぁ、海軍が調査隊を送っていたなんて…」
「あぁ、あれは嘘ですよ」
クラウスはウィンクして見せた。
「やはり王立海軍と国王陛下の名は効果抜群ですな。皆すぐに信用した…」
「クラウス、お前ってヤツは…」
ルークは色々と言いたい事があったが今は助けられた身、文句は言えない。
だが彼の言わんとする所を察してか、クラウスも苦笑を浮かべながら言う。
「…私も嘘は好きではありません。ですが若、これだけは覚えておいてください。正直は美徳だが、時と場合によります」
「ああ…良〜く思い知らされたよ…」

ルークとクラウスのやり取りは、突如入った叫び声によって中断させられた。
「スペランカー号だ!!船長!隊長!スペランカー号です!!」
船の夜間見張り員のその叫びは、全員を色めき立たせた。
様々な物資を積んだ運搬船だったからだ。
2隻の移民船が投錨している近くへと進みながら、発光信号を出している。
「信号です!読み上げます!『ワレ すぺらんかー号。遅レテスマヌ!』です!」
「やったぞ!」
「沈んだと思っていたがちゃんと生きてたんだ!」
「ヒャホー!」
突如としてさした希望の光に喜ぶ人々。
そして2隻の近くにたどり着くと、投錨して、船長がルークたちの船に向かって叫ぶ。
「遅くなって申し訳ありません!」
「とにかく無事にきてくれてよかった。ありがとう!」
ルークも叫び返した。

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