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ノーマンズランド開拓記
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ノーマンズランド開拓記 12


ルークはある事を考えていた。
「開拓事業にある程度の目途が立ったら三隻の船の内の一隻を本国への使者として送ろうと思うんだ……」
ルークの意図を察したクラウスが応えて言う。
「本国からの更なる支援を頼むためですね……そのためには一定の成果が必要という訳ですな」
「そうだ。その目途として先住民との協力関係の構築を一つの目標にしようと思うんだ」
「それは……一体いつの事になるんですかねぇ……?」
「確かに楽な事ではないだろう……だが先住民との関係が危うい状態で使者を送り出せば、それを知ったラスルティアの残党が黙ってないだろう」
ラスルティア王国はルークの母親が嫁いだ国で今はアスファルティア王国の領土の一部である。その経緯から未だにラスルティア人はアスファルティアに対して良い感情を抱いておらず、一部の過激派は地下で抵抗組織を作って祖国の再独立を目論んでいる。
目的のためならば手段は選ばないような連中だ。
もしも今は亡き王の忘れ形見(ラスルティアではルークはラスルティア王の子に違いないと、まことしやかに囁かれていた)が異境の地で蛮族に襲撃されて命を落としたとでもいう事になれば……。
ラスルティアの民は怒り、彼らの中で半ば消えかけていたアスファルティアへの抵抗の炎を再燃させる事が出来る。
その先に待っているのは戦乱であり、ゆえにルークの今の扱いに関してはアスファルティア政府内からも異論が出ているほどだ。

「もし内乱が起これば本国は外地のアルディアなんかに構っていられなくなり、その隙に乗じて他国が開拓団を編成して送り込んで来るかも……そうなったらアルディアの地でエルシオン大陸の人間同士が殺し合う事になるかも知れない」
「確かに……それだけは避けたいですね」

それにハロハとウザラの部族以外にも複数の部族が居る以上、せめてあの二人の部族とだけでも友好関係を構築したい所である。

「僕はこのアルディア大陸をアスファルティアだけで独占したい訳じゃない。むしろ移住を望むなら他国の人々だって歓迎したいと思う……ただ旧大陸の戦争だけは、この新しい世界には持ち込みたくないんだ」
「若……」
ルークは旧大陸のしがらみとは無縁の世界をこのアルディアの地で築き上げたいと夢見ていたのである……。

ルークは本国も含めた旧大陸諸国の現状を憂えていた。互いに争い、覇を競う事しか考えていない。際限無く繰り返される戦争、戦争、また戦争……。アスファルティアが開拓団の派遣を決めた理由も、他国がこの大陸への開拓に乗り出して来た際、宣戦布告の格好の口実に出来るからだという話すらあった。実際、他国がアルディア入植へ向けて動いている事は充分に考えられる。今この瞬間にも他国の開拓団がアルディアを目指して大海原を西へ西へと進んでいるかも知れない。

「ルーク様、私に一つ考えがあります」
こう言ったのはハーヴィン。彼女の案はハロハとウザラの部族に自ら出向いて接触するという物であった。こちらにとっては分が悪い賭けである。ここ数日、彼女達の部族の戦士と思われる人影が砦の周辺で何度か目撃されていた。ハーヴィンはエリスと彼女達との会話からアルディア先住民の言語を解析している状況である。

以前から『アルディア大陸には未開野蛮の民が住んでいる』という噂はあったが、実際に接触して調査研究に基づいた正確な記録を残したのは、この開拓団が初である。

「無茶だ。まだ時期尚早です。危険すぎますよ」
クラウスは反対したが、ハーヴィンは(彼女にしては珍しく)熱く語った。
「しかしやってみる価値はあります。独自の言語と文化を持ち、原始的ながら社会を築いている……。私はこの数週間、エリスとハロハとウザラの交流を見ていて解りました。彼女達は私達と共存可能……いや、むしろ共存を望んでいます!」
「ハーヴィン教授がそこまで言うのなら……解った、やろう!」
ルークは決断した。

決行日は今も降り続いているこの豪雨が止んだ時、ハロハとウザラを案内役として彼女達の集落へ連れて行ってもらい、交渉を行う事とした。


しかして翌日、あれほど激しく降り続いていた雨はピタリと止み、久し振りに晴れ晴れとした青空が皆の頭上に広がった。
ところが…
「ハロハとウザラが居なくなったぁ!!!?」
朝一でやって来たハーヴィンから報告を受けたルークは驚愕し目を見開いて叫んだ。
「ええ…今朝、洞窟へ行ってみたら檻が破壊されていて、中はモヌケのカラ…」
当のハーヴィンも未だに現実を信じられないといった様子だ。
「破壊されたって…あの檻を!?一体どういう事なんだ!?」
「それは…ご自分の目でご確認ください」
「あ…ああ…」
ルークはクラウスとジェシカと共に牢へ向かった。

牢は確かに内側からぶち破られたように壊されていた。
「何て事だ…」
「いくら木製の檻とはいえ…凄い馬鹿力ですな」
クラウスは引き裂かれたような木柵の断面を指でなぞりながら感心してつぶやく。
それに対してジェシカは言った。
「いや、実は大した力を使わずに破壊する方法もあるにはありました。この檻は急造だったから強度が均一じゃなかった。弱い部分を的確に見定めて狙い、例えば助走を付けて思いっきり体当たりするとかすれば…」

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