優劣逆転 2
びっくりしたのか身を固くした彩乃だったが、僕が泣いているのを見て無表情に聞く。
でも、彩乃の目からも涙が流れていた。
「あれ?・・・わたし・・・泣いてる・・・」
その涙が感情が戻ったように彩乃は嗚咽を漏らし、僕と彩乃は抱き合って暫く泣いたのだ。
ひとしきり泣いた後、彩乃はポツリポツリと語り始めた。
それは壮絶な人生だった。
彼女の両親は莫大な借金があり、彼女の結婚を条件にとある貸し手から借金の棒引きをしてもらっていた。
つまり彼女は両親に売られた訳だ。
嫁いだ先と言うのは地主の農家。
夫となった男は当時三十代。
あの消えた日に襲われるように初体験。
そこから中学にも行かせて貰えなかったらしい。
そんな新婚生活が幸せな訳が無い。
義父と義母、それに義弟と義妹との生活。
彼女は全ての家事を押し付けられ、何の自由も無い生活だった。
それだけでなく、毎日義母と義妹はいびり。
義父と義弟にはセクハラ。
夜は夫に嫌でも犯される生活だったと言う。
彼女の口から聞いたそんな過去に、僕は胸が押し潰されるような気持ちになった。
そこまで話して彼女は可愛らしいくしゃみ。
雨で濡れていたせいだろう。
「ああっ!、身体冷えないうちにお風呂入りなよ!」
だが、彼女はキョトンとしていた。
「お背中・・・お流し・・・しましょうか?・・・」
ズレた答えが彼女の通ってきた壮絶さなんだろう・・・
僕は彼女の頭を撫でながらできるだけ優しく言った。
「いいよ、そんな事しなくても・・・ゆっくりあったまればいい」
僕がそう言っても、彼女は縋るような目で僕の袖を握る。
余り感情の無い彼女だったが、何かに恐れるような表情を見せた。
「お願いです・・・一緒にいてください・・・」
何か彼女の捨てられた子犬のような表情に僕は断る事が出来なかった。
脱衣場で彼女が僕の世話をしようとするのを何とか止めながら、洗濯乾燥機に彼女の服を放り込む。
服もそうだけど下着もおそろしく地味。
それだけでなく、あちこちすすけていた。
しかもショーツの汚れはアレ・・・
行為の後にすぐ履いた感じ。
何か更に胸が締めつけられる気持ちだった。
そして見た彼女の裸。
胸はかなり大きくて生唾飲み込んだけど、全体的に色気は全くない。
脇も恥毛も手入れせず伸び放題。
顔だって眉も整えていない。
そう言えば、彼女は化粧もしていなかった。
余り恥ずかしがる様子もない彩乃だけど、僕の方が恥ずかしい。
僕が座椅子に座ると彼女は背中から抱きついてきた。
「ゆっくんの背中・・・おっきい・・・」
どこかホッとしたような言葉。
抱きついて動かない彩乃は嗚咽を漏らす。
ようやく彼女に感情が戻ってきたみたいだ。