侍物語〜サムライストーリー〜 第二部 112
こうして、静江の快楽の夜が始まったのだ。
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静江母娘の歓待を受けた狼鬼は、その後宿へと真っ直ぐに帰った。
水月からの報告によると、向こうが思わしい様子でなく帰らねばならぬらしい。
行けば二、三年こちらに戻れない・・・
形式的にも狼鬼は領主であり、折角の居場所が平穏ならざる事は好ましい事ではない。
丁度、静も帰ってきた所を見計らって狼鬼はその話をする。
これを隠したりするのは狼鬼の主義でないし、迂曲な表現もしない。
ただ一言「向こうに二、三年戻る」と言ったきりであった。
少し驚いた顔の静だったが、まるで夫を送り出す妻さながらに「無事のお帰りをお待ちしております」と返したのみだった。
もう二人の関係上、余分な話は必要無い。
静もまだ狼鬼について行けぬし、狼鬼もそれを理解して求めなかった。
ただ静は一言付け加える。
「理緒と朱美をお連れ下さい。」
「良いのか?。」
聞き返す狼鬼に静が笑みを見せる。
「理緒と朱美はあなた様の妻。私の許可がいりましょうや?」
狼鬼がこの男にして珍しく理緒と朱美の事を離したくない素振りなのを静は見て取っていた。
女としての嫉妬心は全くわかない。
むしろ、二人が狼鬼に愛され、役に立ってくれればと思わずにいれないし、自分がついて行けぬもどかしさを娘達が晴らしてくれるような気がしていた。
「ならば連れていくが、返さぬぞ。」
理解した狼鬼の笑みに静も笑みで答える。
そして、静は理緒と朱美を呼んだ。
「座りなさい。」
威厳の籠った母の口調に二人はきちんと正座する。
優しいが静は事の外厳しい母でもある。
「狼鬼様は旅に出られます。」
静の言葉に二人は動揺するが、姿勢は崩さない。
「その旅に、貴女達二人が同行できるお許しを狼鬼様から頂きました。」
落胆から一転、飛び上がらんばかりに喜びかけた朱美の膝を理緒がたしなめるように叩く。
ここで破目を外す事は礼儀に厳しい母が許す筈がないのは年長の理緒は心得ている。
「その事に感謝し、狼鬼様に誠心誠意お仕えしなさい。」
「「はい、お母様」」
二人の返事に満足した静は言葉を続ける。
「貴女達二人は特に狼鬼様に身体でご奉仕する事を求められ同行する訳です。」