PiPi's World 投稿小説

独裁者の後宮
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 16
 18
の最後へ

独裁者の後宮 18


それからトラックに揺られる事数時間……日が暮れた頃、ようやくトラックは停車した。
「お降りなさいませ」
女の指示に従ってジョン、メイリア、エレナ、ミレイユ、レオナの五人は荷台から降りた。そこは森の中だった。
「どこだここは…?」
ジョンは辺りを見回してつぶやく。それに対してエレナが答えた。
「おそらく国境に近い山中と思われます…」
「やっぱり私達全員ここで銃殺されるんじゃ…」
「ひぃ…っ!?」
「そ…そんな…」
メイリアの言葉に身を強ばらせるミレイユとレオナ。リーダー格の女は言った。
「ご安心くださいませ。私個人としてはこの場で皆殺しにして差し上げてもよろしいのですが、そのような真似は“あのお方”が望んでおられませんので…」
「“あのお方”というのはお前達の指導者の事か?」
ジョンが女に尋ねる。
「それは私達と共に来れば解りますわ…こちらへ」
そしてジョン達5人は女の後に付いて歩き始めた。

少し行った所に洞窟があった。
中に入ってみると始めは天然の洞窟のようだったが、奥へ進むにつれて整備された地下道へと変わって行った。
「こ…こんな設備があったなんて…!」
メイリアは驚き半ば叫ぶように言った。自分は国中の全ての施設を把握していると思っていたのに…。このような本格的な地下道がゲリラごときに造れる訳がない。大規模な工事が必要となる。どう考えても国が関連しているとしか思えない。
リーダーの女が解説した。
「メイリア首相がご存知無いのも無理はありませんわ。ここは第二次大戦中に建造された地下要塞だそうですから…。第一級の軍事機密ですから旧王国軍の軍人でも知っているのはごくわずかな者のみ…」
どうやらホセ以下クーデター軍の中には一人もその存在を知る者は居なかったようだ。地下道はアリの巣のように何層にも分かれて十数キロに渡って広がっており、出入口や銃眼や砲座も無数にあるという。
そこまでの装備を集める資金が旧王国派にある訳がない・・・
それはメイリアが一番よく分かっている。
なら、これは一体何だ?
彼女達の装備は最新鋭であり、これは諸外国・・・
それもかなり大国が絡んだ話であろうか・・・
優秀な政治家でもあったメイリアの美しい眉が歪む。
彼女の愛した国が、己達の愚かさだけでなく他国の介入で混乱するのは我慢ならなかった。
これでは何の為にホセとクーデターしたのか分からない。
「旧王国だろうが何であろうが・・・他国に国を売る行為は許せないわ・・・例え殺されようがそれだけは交渉の余地はないわ」
膨らんだお腹にそっと手を置きながらも、彼女の表情はかつての共和国首相の威厳を取り戻していた。
ホセやジョンは暴君とも言えるが、彼女はそれを支え貧しいながらも国民の大半を餓えさせる事はなかった。
それは、かつての最貧困だった旧王国よりも暮らしやすく、それが故に大統領が暴君でも国家が維持できていた訳だ。
「我々の目的もまた国家の為です、メイリア・カルロス首相・・・いえ、メアリー・ルクレール・エスタニア公女殿下」
女の言葉にジョンはうろたえ、ミレイユとレオナは呆然とする。
険しい表情となったメイリアは、女を睨みながら言う。
「メアリー・ルクレール・エスタニア公女と呼ばれる方は、30年前の遊覧船事故で父である当時の王弟フィリップ・ルクレール大公と共に事故死した筈・・・そんな亡霊の名を今更聞くなんて思いもしなかったわ!」
睨みつけるメイリアに対して、女は平然としていた。
「ええ、公式文書ではそうなってますわね・・・エスタニア共産党のテロに見せかけた、王国強硬派の起こした事件でしたわ」
彼女の言葉にメイリアの表情が更に厳しさを増す。
「あなた・・・『それ』を知っているってどういう事?・・・そして、今更それを言ってどうするつもり?・・・」
「さあ?、それは“あのお方”にお聞きになってくださいな・・・国王陛下の愛人様」
女の言葉にメイリアが低く呻く。
内容は殆ど分かってないが、ジョンは流石に心配してメイリアの背中にそっと手をやる。
それだけを言うと女はスタスタと歩き出し、ジョン達はそれ以上の質問も挟めず、ついていかざるをえなかった。
「この情報は知っていたの?、レオナママ」
ジョンがレオナに小声で話を振ると、レオナは首を横に振る。
諜報部を取り仕切っていた彼女すら知らない事があったとは、それもジョンにとって驚きだった。
かと言って、今のメイリアには聞ける雰囲気ではない。
数々の疑問を抱えたまま、一行が案内されたのは一つの部屋だった。

そこは軍事施設には不似合いな程、品のある応接室だった。
メイド姿の女性が一向にガウンを渡すと、ジョンは何一つ警戒する事無くそれを羽織り、ついでにメイド達を物色するような目つきになる。
流石と言うか何と言うか・・・
こと『大物』ぶりだけは大統領であろう。
そんなジョンに呆れつつも感心しながら、ミレイユとレオナもガウンを羽織る。
これで危害を加えるつもりなら、とっくの昔に殺されてる筈だと、用心深いレオナでも分かるが、ジョン程無警戒には行動できない。

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す